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少し前 ラウンジ
「田中さん、ご飯食べました?
行かなきゃだめですよ。」
……さっき食べたよう。だからもう、食べたかァないんです。
あたしァ、ここに居たいンです。
待ってるって言っちまったからにァ
あの子ァね、検査だって言ってたんですよぅ
なんだかね――気のせいならいンですけども、
怖そうに見えたからね、そんなら、
……あたしには出来ることなんてないですけども、
せめて、せめてェ待つぐらいはァ、つって……
「でも、田中さん、
きっとね、検査はご家族の方がついてらっしゃいますよ。」
――――……
「ね、そんなに不安がってたならきっと、
ご家族の方を呼んで、きっともう、心配なく検査受けてますよ。
だから田中さんは、その子が戻ってきたときに元気に迎えてあげましょう。」
[押し黙る老婆の隣に座り、根気強く言葉をかけていた看護士は、老婆が微かに頷いたらしきを目に入れて満足そうに頷いて去っていった。]
現在 ラウンジ
[老婆の手の中で、黒い天鵞絨の洋服が揺れた。
常に似合わず、力強く握りしめ、黒い布地に折り目が入る。数滴、滴が零れ落ち、布を湿らせた。]
あたしァ、――……
そうだよう、家族じゃないよォ
…………知ってたもん。
……――知ってるもん。
[聞く者のいない独り言が人形の平面の瞳に落ちていく。
老婆はふと、頭に手を添えて体制を崩した。ほんの数十秒のことだった。]
[身を起し、彼女は頭をふるった。
皺だらけの顔面に二つある、黒い眼をゆっくりと開けて、周囲を見渡す。おどおどしく辺りを窺うと、彼女は立ち上がった。]
……、……。
[胸元の衣服を握りしめ、彼女は椅子に縋るようにしつつ立ち上がった。金髪の人形が彼女の膝から滑り落ちる。
周囲を探る眼差しはそのままに、そして、人形を見ることもなく、彼女は歩み、それから小走りに去った]
/*
さっきから コハルちゃんに遭遇していいかで悩んでいる
や、やりたいことがあるんじゃないかしらん
それと、ばあちゃんこっから クレープどうすっか……
クレープ屋さんて都会とかショッピングモールにあるよなぁ
[メモと腕時計を白衣のポケットへそっとしまい、涙が乾く頃部屋を後にした。
塞いでいる暇なんて、なかった筈だ。
5階の廊下。奥手には無菌室が存在する。
先日、”バレーボールが出来なくなるかも”と告げた後、表情を失った少女の事を思い出した。
彼女がそこまで部活動に心血を注いでいたとは露知らず、出来なくなった後も別の趣味を見つけてくれれば、という独りよがりな思考を露呈し、そのままになっていた。
あの子は、どうしているだろう。
思い立ち、無菌室へ足を運んだ。]
[ノートだけ広げて、ベッドの上で、ぼんやりと過ごす。こんな日も、悪くない。
千夏乃のノートは全科目共用だ。
あるページには数式が並んだかと思うと、次のページには詩が、その次は植物のスケッチ、といった具合に、思いついたことを思いついた時にやるものだから、いつの間にかひどく賑やかなページが出来上がっていた。
ベッドの上だと、談話室のテーブルでやるよりも眠たくなってしまう。ほとんど条件反射だ。外はゆるやかに高度を下げていく太陽が、遠慮がちに光を投げかけていた。
フリーハンドで比例のグラフを描きながら、千夏乃はまた少し、*うとうと*。]
1F 廊下
[彼女は上着もはおらず、手にもの持たず、歩いた。
建物内をうろりと歩き回り、何かを必死に探すような眼差しで周囲を見渡す。
そこにちらりとでも、無菌室にいるべき姿を見つけたら、
もしくは中庭に向かう姿を見つけたら、動きは止まったことだろう。
けれど今の彼女に何か建設的なことが言えたのかは別の話だ。]
建物外
[ようやく、目当ての場所が見つかった彼女はそこから建物外へ出た。
老婆の日課であった散歩を知っているものならば、
病院の敷地内を歩む彼女を止めることはなかった。
老婆は、時折、意図の不明な駄々をこねたが
おおむね大人しかった。
老婆の我儘が増えたのはここ数日のことだった。]
寒い……。
……、……おうち、帰らないとォ
無菌室
[病室の外側に付けられた小窓から、無菌室の中をそっと覗く。
鎌田の姿はそこには無く、扉を開いて中へと一歩、踏み出した。
室内へ視線を巡らせると、先日置いてあった筈のバレーボールが、無い。
考え過ぎだろうか……、過ぎる嫌な予感が、あった。
丁度5階だったからかもしれない。
咄嗟に思い至ったのは屋上だった。
外に出たとすれば、一望し捜索も叶う場所でもある。
看護師に声を掛けるでもなく、屋上へと足早に向かった**]
[何処を通ってきたか分からないけど、中庭についた。
看護師が追ってきてるかもしれないけどそんな事はどうでもいい。
持ってきたバレーボールを見て苦笑する。
『がんばれ!』だとか、『負けるな!』だとか。
ごめんね。私は、未来に絶望してしまいました。]
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