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否定はできないし、するつもりもないけどね。
――馬鹿だよ、大馬鹿だ。
[カウコの言葉に漏れる嘆息]
生かしたい、か。
ん……、
間違っても死んでほしいとは思わないけど
ただ、今の状況で生き残るのも酷かも知れないよ?
その意地をつまらないとは、少しも思わないけどさ。
――
文明の波が何ですか、か。
選ぶ自由は残されると想っているのだな。
[小屋へ射掛けられる火矢の軌跡が、視界へ入る。
連れ立つ群れへ床下の際を掘るよう指示し呟く]
ああ。必要なものを、必要なだけ求めるかね。
一旦容れたものを、
己らの都合だけで撥ねつけるのは難しいぞ?
…流れ者のあたしや、イェンニや…
骨鈴の如くわらう男を
容れた結果の如く、*な*。
[ずるり、引き出されるアルマウェルの肩の傷口からは、紅い血が流れ続けていく。独力で起き上がる事もかなわぬらしき彼の身を引き寄せ肩を抑えて、トゥーリッキと助力をくれた狼へ浅い礼を向けた。
車椅子の背に隠し置いたナイフで服を裂き、出血の酷そうな肩の傷を裂いた服で縛る。車椅子から身を乗り出し、傷だらけのアルマウェルに手を伸ばして引きずり上げ、無防備な背をトゥーリッキや狼や蛇へと向ける間]
…付き合い方を覚えてからでも遅くないはずです。
[忘却の術を持たぬアルマウェルへ、奮い立たせる強さはなくも回復を願う態で静かに囁く。大雑把な応急手当を済ませると、手を離せど彼の身は車椅子に座す膝元に寄りかからせるまま]
酷でも、生きなきゃ――話にならんだろ。
次を考えるのは生き残ってからでいい。
[それも我が侭だと知っていながら。]
それに、当事者が生き残らないと、
――……。
[続く言葉は飲み込まれたけれど、やはり酷なこと。]
なかったことにしないために、生きるんだよ。
死んだ俺が言うのもおこがましいけどな。
[深い息ひとつ、落として。その先に見る*結末は*]
[アルマウェルが発する苦悶の呻きは耳に憶え、
イェンニの血を煮上げた腸詰めを喰らい終える。]
…――律儀かもしれん。
[血錆めく甘さの残る指を舐りながら、身を屈め
ビャルネが残した飾杖を じゃらり 拾い上げ]
なので、差し出されたものは受け取るとする。
[背を向けた車椅子の青年、その肩越しに――
遣い手が鋭く突く杖先は、吸いつく如く向かう。
身を起こされ、苦痛に喘ぐアルマウェルの喉へ。]
望まれぬ言葉を 求めた
*対価を*。
いきますよ。
[アルマウェルのわきの下に腕を差しいれ、ぐ、と彼の身を持ち上げ地に立つ。ギヂギヂギヂギヂ…―――非難の音は一気に高まり、ばらばらと天井は崩れ始めた]
僕は彼らの毛を呑みました。
…ツケの支払いの一部は彼らに求められるかと。
早く遠くへ逃がした方がいいと思います。
[車椅子から立ち上がった求道者は訥々と変わらぬ口調で語り、差し出すものを受け取ると言うトゥーリッキを振り返らない。ガタッガタン―――崩れ落ちる柱は寝台の上へも、つつかれていた鍋の上にも降り注ぐ]
…―――トゥーリッキ…
僕はもう奪われました。
[笑まぬ口が嘯いた冗談めかぬ言葉は崩れ落ちる小屋の悲鳴にかき消され、崩れる小屋の外へ杖先の迫るアルマウェルを力いっぱいに放る。村人は崩れる屋根の上から慌てて飛び降りるだろうか、何人かは倒壊に巻き込まれたかも知れないけれど、確かめもせず杖に突かれ倒れる視界には紅いマントが*揺らめいた*]
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