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[そして、男は消してしまった世界が2つある。
おそらくどちらも、男が思うことすら拒否するだろう、選択して殺した世界。
その世界がもし、復活したら、どうなるだろう。
彼らは喜ぶだろうか。
自身は喜ぶだろうか。
――……否……
少なくとも、この記憶。
この殺し合いの記憶を持ったままであれば……。
きっと見る目は今以上に歪んだものになるだろう。
でも忘れてしまえば、
また、何も知らず繰り返される、殺し合い。]
…、いるのか。
[ナオの告げた事実には、少し驚いた。
思わず辺りを見回しかけて、彼女の視線に気付く。
目を見返した。真剣な眼差しに目を細める。]
なんだ?
[短く問うた。]
[クルミのいる柱を見て、呟く]
とりあえず。
私の世界を甦らせようとしたら許さないから。
[その声色は真剣なもの。
自分がここにいる意味。
それは多分――理不尽な世界を壊すためだ。
歪んだ世界は、自ら滅ぶことを選んだのだと思う]
「怨んでない」って。
それだけ。
[伝言は終えたが視線は外さない。
反応を見定めているようにも、
ひと仕事終えて呆けているようにも見える、
向こうの気持ちしだいでどうとでも映る淡々とした態度]
/*
クルミというのを見ていると、ちょっと前にきょうの料理ビギナーズでやってたくるみ餅を食べたくなってしまって仕方がないという罠。
[そこまで言って、けらっと笑う]
ちげーよな。
とは思ってんぜ。
ただねーちゃんは、すっげー欲張りなんだなーと。
ヨシアキのにーちゃんと一緒でさ!
そういうあたり、おにあいだよなっ。
[無邪気に二人を交互に見て、
…すっと笑みを引く]
だけど、かみさまだってきっと、全部は無理だ。
選ぶことも、大事なことだとオレ様は思うぜ。
それに、クルミのねーちゃん。
コハルのねーちゃんと約束してたじゃん。
あれはいーの?
無視して、いいん?
[最後に問いを添えて、こてりと首を傾げた]
[もし、復活となれば、
自身は、やはり、同じ行動をとるだろうと、漠然と思う。
そして、今度は、
今回以上に……そう、セイジやデンゴも殺すことになるかもしれないと思う。
そう、傲慢に世界を選択すると、きっと。]
[隣の柱にいるフユキの涙を思う。
自分の世界が滅んで、涙なんて流せない。
大切なものごと滅ぼす選択をした自分には
持ち合わせていない感情だ。
恨んでないと、ヨシアキに言うのも
自分にはない何かを見た気がして]
……。
[ただ、黙って見つめる。
そんなフユキに羨ましいというのは、
あまりにも残酷すぎるから]
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