情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[侮蔑の視線を向ける赤毛の男に目を向けることもなく、女の股に顔を埋めようとしたとき、
薪を運ぶ男の一閃に、気狂いの男は、打たれたように大袈裟に転がって、やや、痛い痛い、と身を捩らせた。
されど、打った本人にはわかるだろう、本当は、それは掠めた程度で、元は軽業を業となした男は、それをひどく打たれたフリをしてごろごろと地面に転がってみたことを。
それからは、彼らとはやや距離をえた場所で、それから起こる出来事をにやにやと、だけど、表面上は仮面のような顔でみつめている。**]
[――――漁師は網を手繰るが、
『邪悪なドラウグ』はひとの脚を手繰る。
掴む藁もない水の中。浮かぼうと藻掻き、
蹴りつけようとする身悶えが何になろう。
けれど陸のいきものは本能で知っている。
掴む手の主が、懇願や哀願を容れる等
決して、決して、ありはしないことを。]
ヒト オモテ
[人間の面はいつでも水面を向いていて、
足引く者は、断末魔浮かべる彼らの表情を
死すまでよくよく眺める機会があまりない。
だから、
足首を離して 錆びた鎖を引いてみたのは
またひとつ浮かんだ気泡めく悪意の故――]
… 知らせると
気の毒かと考えたのだがね。
["音"を伝える術のない深み。]
[――――耳奥で、音は割れる]
貴方に恩赦は出ないそうだ、
赤心の告発者殿。
[ボディルの眉根が寄るのを、
その深さを、 眺めて、]
代わりにこの数字が、
[彼の枷に刻まれた、
西の街の地下牢のしるしと数字を辿る。]
永劫に貴方のものになった と。
[目前で無念に凍え溺れる赤毛の男。
掴み引く魔は、浅く首を傾ける。
手に入ったものがあって僥倖だとばかりに。
記憶の断片は、死後のたましいが
切れ切れに浮かべることもあろう*]
[――魔性討たれて、その日は変わり。
陽のささぬ夜明けの海に、
赤毛の青年が逆さに浮いていた。
信仰に眩んだ瞳の僧が糸で切り刻む間も
ヘイノを押さえつけていた彼の枷の鎖は、
引かれた様に水底へ垂れてとぐろを巻く。]
まだ死ぬ訳にはいかない、と
言っていたのだったか。
[皆も気付き出す頃、浜辺から眺め――*]
死儀を執り行う私が弔らえば救われるのですよ。
どんなに穢れていてもね。
それを邪魔する奴などは、堕ちてしまえばいい。
[ケラと笑う、笑う]
死の主導権を奪おうとするお前は一人で逝け
[か細い糸で狙うは首一つ。
しかし死体をバラすようには行かずに糸は、赤く染まる
赤い朝露が滴り落ち、僧の指が一つ、二つ落ちる]
……
「気づけば何もない
指の激痛に囚われながら、赤い川を作りながらも
男は石女の死体を片づける]
ああ、気に入らない。
気に入らない
気に入らない
気に入らない
死を御しようとするモノがいるのが
気 に 入 ら な い
[守るべきは己の信仰に沿った世界]
絶望しかない滅びの世界であっても、理に沿って滅びるべきだ
[バラした女の断片を食む]
あの告発した若者はドコに消えた?
[弔い損ねた男を探索するようにさまよう]
[とむらいの在りよう占めて譲らぬ僧へ
口出しする者は、今のところいなかった。
他の生き残りは仮面外さぬ物狂いの軽業師に、
虚空の死人へ話しかける重石つきの学者――
堅物の執行人が話しかけるのは、
いきおい、無気力そうな男になる。]
"彼"のああした姿は、
よほど魔物じみていると思うが…
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了