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時同じくして五月のある日。
アンは村の自警団長から手渡された封書を見ては、
怪訝な表情を浮かべた。
差し出された中身を確認すると、そこには先日森の中で発見された変死体への事件性を唱えた内容と、人狼の嫌疑をかけられた者の名前が連なっていた。
無機質に並ぶ手書きの文字の中には、なぜかアンの名前も記載されており、
冒頭の不躾な言葉が彼女の口から吐き出されていた。
「人狼の疑い…ってどういうこと?!」
やや詰問調に投げかけた謎に、
自警団長は少々青褪めながらも
苛立ちを隠せない表情を浮かべながら、
それでも淡々とアンに対して理由を告げた。
今回被害を受けた者の遺体の特徴が、
言い伝わる人狼のそれと酷似すること。
また、遺体が発見される数日前に森へ出入りした形跡がある者総てが今回被疑者の対象となると。
そして、一通り説明が終わると自警団長は、村の片隅にある一軒の宿屋を指し、強制的に出向くように告げてその場を立ち去る。
【嫌疑を晴らしたければ、自分たちの手で人狼を見つけ、
我々に突き出せ】
そう、付け加えて。
身に覚えのない疑いを突如かけられたアンは、
指定された場所へと足取り重く向う。
やがて視線に捉える収容所として宛がわれた宿屋の入り口には、
真新しい紙が一枚、貼られていた。
【処刑の敢行】
・一日一人、集められた者達の中で疑わしいと思われるものを、毎夜23時30分の見回り時に我々自警団員へ差し出すこと。
誰ひとりとして差し出せぬと判断した場合は、その場で総ての者を処刑とする。
・我々自警団の処刑を待たずして、自らの手で疑わしき者を処分としても構わないこととする。
・尚、すべての人狼と思しき者の処刑完遂と思われた場合は、残った者総ての同意が得られた場合のみ、解放への交渉へ応じるものとする。
「なに、これ…」
まだ誰も集ってはいない空間に一人佇むアンは、
血の気が引けた唇を苦く噛みしめ、
踵を返し件の森の方向へ、無言で*走り向かった*
学生服とは、なにやら生地が薄う思われますな。
モダーンとはこういうものでございましょうか。
のう…そこのおねえさま。
…おや、言ってしまわれた。
[無言で去るアンに気分を悪くしたふうでもなく、少女は微笑を浮かべてかぶりを振ると、宿屋の一画にテントを張り始めた。]
さっきすれ違った子…大丈夫かしらね。
[ボソッと呟き、
森の方へ視線を向けた。]
あなたも呼ばれたのぉ?
こんな胡散臭い宿屋に…嫌ぁね。
[テントを張るチカノに目線を落とし、
ため息を吐きながら首を傾げる。]
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