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[結城に答えつつ、また木に寄りかかる。
自分の内に響く不協和音、相反する何か。
それは、木に接していると少しはっきり、感じられて。
今、寄りかかっている木が、ふたつにひとつで揺らいでいるのが微か、感じられた]
…………。
[ぼんやりと、見上げる梢。
そこに若緑と濃藤紫があれば、それは、子供の頃によく見ていた光景と重なるのだけれど]
……なんて、言うか。
寂しいよ、なぁ、これ。
(……でも、なぁ)
(どっちか選ぶのって、怖いよ、なぁ)
(……俺も最初に選んだ時、すっげぇ怖かったもんなぁ)
[ふたつにひとつ、どっちを選ぶか。
最初にその岐路に立たされたのは、まだ幼い頃。
裏山で遊んでいて、最初の発作を起こして倒れて。
遠くの病院に入院するか、それとも地元で療養するか。
周りが前者を選ぼうとする中、自分は地元を離れるのは嫌がった。
発作は苦しかったし、真面目に死線を彷徨った、けれど]
……いたくたって、きつくたって。
それでも、選びたいものって、あるんだよなぁ。
[ぽつ、と呟く。
それは、今の自分にも向いているもの]
……こわいけど。
なんとかなるかも知れないんだし。
やりたいよーに、やっても、いいんじゃない、かな。
[なあ? と。
同意を求めるように、首を傾げる。
傍で見ている二人には、多分、意味の通じない言葉と仕種だろうけれど]
……ちょっとだけ、さ。
がんばって、みよーぜ?
[へら、と笑う。
内に響く不協和音が大きくなって、それに自分の脆い部分が共振して、ちょっとヤバい事になっているような気がするけれど、そこは見ない、見ない。
……いや、見ない、で済む事態じゃその内なくなるわけだが]
[さわり、と。
風もないのに、枝が揺れる。
頷くようにも見える動きに、また、少し笑った直後]
……っ!
[鎮まる不協和音と入れ替わるように、違う不協和音が発生して、息が詰まる。
反射的に体を丸める仕種は、多分、結城は見知っているもの。
呼びかける声はどこか遠く、それに返す言葉は]
……逃げない、よ。
[やっぱりどこか、意味の通らないもので。
それに同意するように、また、木の枝が揺れた。*]
[素で投げた問いに返される言葉。>>96
何気に、それは自分も隅っこに押し込んでいたものだったから、浮かんだのは、苦笑]
ん……裏山、遊び場だったよ、ね。
[小さく息を吐き出しながら、そう言って]
……そーいや、俺、理由も言わないで約束すっぽかしたりしてたっけ。
[またあそぼ、とか、そんな他愛ない約束。
すっぽかした理由は、結局は検査とか色々のせいだったのだけれど。
その内、裏山に行っても会えなくなって、なんだか妙な空洞ができたみたいな感覚ができて。
それがうまく言えないけど、きつくなって、記憶の隅にぽい、としていたのだと。
今になって、思い出していた]
っとに。
なーに、やってたんだろ、なぁ。
[すれ違い、と言ってしまえばそれまで、だけれど]
……でも、うん。
すれ違ったままになんなくて。
良かった……か、なぁ。
[そう言って笑う様子は。
発作が落ち着いて来た事もあって、少しだけ、ほっとしたようにも見えるやも]
……あの時って。
[思い当たるまではそう、難しくない。
しまい込んでいただけで、忘れたわけではないから]
……多分、忘れてない、と思う、よ。
[周囲に揺れる藤の花房を軽く見やってこう返す。
物言いを曖昧にするのは生まれつきの気質のなせる業]
[背を向けたまま、綴られる言葉は拾い上げた記憶のそれと重なって。
やっぱり、と思いながら、話を聞く]
……あー、うん、覚えてる。
[相槌を打って、思い出す。
少しだけ気が急いていて、先を急いで。
転ぶ音と、泣き声に慌てて駆け戻って。
……女の子が泣いてる時にどうすればいいか、なんて……まあ、今でもちゃんとわかってはいないわけだが、それはそれとして。
横に落ちてた藤の花房の事も気にしてたみたいだから、とそれを拾って]
……思えば、当時の俺って、怖いもの知らずだったなぁ。
[ぽつ、と呟く表情はやや苦笑気味]
『みんな一緒なら、寂しくないよね』って言って。
掬ちゃんの髪に落ちてた藤挿して、一緒に行こう、って言ったんだっけ、確か。
……今だったら、絶対できないなぁ……。
[主に気恥ずかしくて無理だろう、というのは予想に容易い。
でも、『一緒なら寂しくない』というのは、当時の自分の本音で──だから、素直に言えたんだろう、と思う]
……でも、うん。
あの頃、ほんとに楽しかったんだよ、な。
それが、俺の身体のあれこれで壊れた気がして、それがきつかったんだよ、なぁ……。
[拾い上げた記憶の隅で絡まっていたもの。
大人しく治療を受ける気になれない理由がほどけて、零れる。
生まれついての重疾患。
それが簡単に治るモノではないのはわかっているけれど。
少しだけ、もどかしいものが浮かんで、消えた]
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