156 じんろうさまのかみかくし村 〜まつりごと〜
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杜氏 ダンケ
［子供たちの誘いを後でと断った先で声をかけられる。
化粧師は笑っていなかったろう、たぶん、自分と違って］
化粧師っていうのは、見えないものを見る力でもあるのかな。
［笑みを抜くように息を吐く。
コエのないまま、問いかけるように首を傾げた*］
【赤】 杜氏 ダンケ
ねがう。
［化粧師の言葉を反芻する。
願う。
その言葉に感じるのは、かすかな羨望］
願うこと、か。
［祭りの夜に咲く花は。
自分には見つけられなかった］
見つけられたら、何か……
［願ったろうか］
杜氏 ダンケ
神様の尻尾、か。
［なるほど、と一度自分の両手を見下ろして］
俺は、願えないよ。叶いもしない。
［相手を見直して、微笑んで、小さく頷く］
そうか。神様の尻尾、掴みたいと願ってみるのもいいのかもな。やってみる？ ンガムラさん。他の願いでもいい、あるならば。
去年、みんなが帰ってきますようにって、マシロは願ったよ。
……優しいな、あの子は。
［うらやましい。と、音なく唇は動く］
【赤】 杜氏 ダンケ
……。
［動いた唇を一度とじ合わせて。
描いた言葉を思い浮かべる］
うらやましい、か。
［コエにしてみる］
願い事が、あったのかな。俺には。
［忘れてしまった。
その中に、あったのだろうか］
【赤】 杜氏 ダンケ
［コエにする。
けれど返る音はない］
……。
［耳を澄まして、いくらも待って。
それでも、楽しげに笑うかすかな音も聞こえない］
杜氏 ダンケ
それを神様に頼むのか。
［ぱちくりと瞬きを一度］
まあ、調べたというのなら、説明は今更だな。
案内はいる？
いらないといっても、俺もいくんだけどね。
【独】 杜氏 ダンケ
［花を摘む。
願う。
代償を払う］
もう、調べたというのならば。
今までを体験していた君ならば。
［それらはすべて、想定のうちか。
ならば今更、説明するまでもない］
杜氏 ダンケ
そんなにおかしかった？
［自分も、一度吹き出してしまえば笑いは止まらず］
調べたんだよね、神隠しのこと。
よければ俺に教えてくれないかな。
［少し足をゆるめてみる。叶うならば、化粧師の隣に並んで*］
【赤】 杜氏 ダンケ
どんな風に、伝わっているのだろうね。
俺のこと。
君のこと。
俺たちのこと。
君は、知っていたかな。
俺は、興味がなかったのかな。
それとも忘れてしまったのかな。
【赤】 杜氏 ダンケ
思い出せば元通りになる訳じゃない。
彼は俺を消すことを望むらしいから、この後の村のことはわからないけど。
今になって、少しだけ、
【独】 杜氏 ダンケ
できうるならば、
［思い浮かぶのは昨年、マシロが願った言葉］
……。
［袖を探れば、小さなとげが指に当たる。
反対の袖に入れた小さな小瓶。
ふたはきちんと閉められたまま。
不思議に思って取り出せば、
たった一粒、青い色の、星の砂］
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