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[そしてあの日、蛍川の川底に見たものを伝え、]
御縁の繋がった人が、神隠しに遭って。
それでいまりちゃんは、引きずられてしまった。
[そこで言葉を切り、ギンスイの反応を待った**]
居候 プレーチェは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
[人じゃない。その言葉を否定はしない。
だがギンスイの顔に怯えが浮かんだのを見ると、表情は焦りに覆われ]
違う…、引き込んだりなんかしてない…!
私は、私はただ…、ねぇ、待って!
[声は、届かない]
[伸ばした手を、力無く降ろして、ゆるゆると頭を振る]
どこから間違ってしまったんだろう。
[縁結びの川として、人から愛されていた自分の住家]
私はただ…、蛍川を、そこに蛍がいることを、忘れないでいてほしかった。忘れられるのが怖かった。
……コンクリートで舗装した川に、蛍は住めないんだよ?
あぁ、わからない。
人間は愛しい。綺麗だと喜んでくれたから。
でも、だから寂しい。忘れられていくことが。
寂しくて、愛しくて、想い続けるうちに人に成った。
この姿なら、人と言葉を交わせると思った、でも。
人の姿になっても、うまく言葉を届けられない。
……最初から全て、間違っていたのかな。
[ふらり、ふらりと、蛍川を離れていった]
[神社の石段をふらふらと登っていく]
ねぇ、村の神様。
人が好きだといいながら、私はとても悪いことをしてしまった。
私が御縁を願わなければ、いまりちゃんは消えずに済んでいたのに。
……あなたはどう?
あなたは、人間が好き?
[石段を上りきった時、本殿から出てくる人影が見えた**]
[本殿から出てきたその人を、神様かと思った。
日の光に出ると人間だったけど]
老先生……。私をプレーチェと呼んでくれた。
異国から帰るたび、この光を見ると安心するって。
儚くも懐かしい光は、自分にとっての“Prece”だと。
[だから最初に、彼に会いに行った。
「君は?」と問われて、「プレーチェ」と答えた]
そう、かなぁ。そうだといいなぁ。
神様も、人が好きだと嬉しい。
[心を半分どこかへ置いてしまったような、ぼんやりとした表情で呟く]
[見つめてくる瞳が優しくて、心が端から溶けてしまいそう]
……いまりちゃん。萩原さんちの、いまりちゃん。
わたしのせいで、いなくなってしまった。
[ゆりかごの中にいるような、ぼんやりとした心地で頭を撫でられていたが]
ひゃうっ!
[間抜けな悲鳴を上げ、デコピンされた額を撫でさする。
怒られたい。無自覚の甘えを見透かされた気がして、顔に熱が上った]
……お手伝い?
[額をさする手を止め、きょとりとザクロを見返す。
彼女の言葉の意味をわからないなりに考えて]
私に、できることがあるなら。
[彼女をじっと見つめた後、こっくりと頷いた]
[ザクロの説明を、時折疑問符を浮かべつつも飲み込んで]
狐と、鬼。
[蛍は川の周りのことしか知らなかった。狐と鬼のことも]
それで上手くいくのかはよくわからないけど……、
あなたが肝の据わった人だというのはよくわかった気がする……。
[もごもご言って、頷いた]
……鬼の所、って、心当たりあるの?
[鬼だと名乗る人。ぱちぱちと目を見開く。
しかし否定する要素はない。自分も似たり寄ったりだ]
楽になりたい、というより。
どうにかしたくて、もがいている、とか。
[それは単に、自分のことでもあるわけだが]
[寂しそうな横顔を見て]
でもあなたいいひとだよ。
[彼女がしてくれたように、ザクロの頭を柔らかく撫でた]
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