55 極夜の村
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獣医 ウルスラ
［先に進むために必要なもの。
それが今は足りていない気がした。
今はとにかく、手掛かりが欲しい］
……誰かいないモンかねえ。
獣医 ウルスラ
［不意に聞こえてきた声に、そちらを見やる
視界に入ってきたのは、洒落た帽子をかぶった男の姿］
おや、ラウリか。
どうしたんだい、こんなところで。
やっぱり、気になったのかい？
［祭壇の方を目で指しながら尋ねる］
獣医 ウルスラ
ああ、そうだねえ。分かりきった話さ。
……ついさっき、確認してきたところだし。
［今度は視線を祭壇には向けない。
ラウリの方を見据えたまま言葉を継ぐ］
分かってはいるが……誰が味方で誰が敵か分からない。
手掛かりも何もないまま、どうこうするわけにはいかない。
そういう、ことだろう？
獣医 ウルスラ
有用な手掛かりだけど、持つ者としては
おいそれと明かすわけにはいかない。
少なくとも……見つけてないうちから名乗り出るなんて
期待はしない方がいいってことさ。
狼遣いを見つけた、というのであれば
まだ「ある」話かもしれないけどね。
［切羽詰まってる状態、既に出た犠牲。
その割にどこか世間話の体なのは
雲をつかむようなお題を突き付けられているせいか］
探せ、とは言われても
下手打つと、気がつけば生きてる人間は狼遣いだけ、
ってなことにもなりかねないからねえ……。
本当、難しいモンだよ。
［頭を使うことは苦手でね、と少し顔をしかめる］
獣医 ウルスラ
遠吠えは止んでも、あれだけの群れだ。
人ひとりじゃあとても足りないだろうよ。
ましてや、誰かに操られてるのであれば
飢えずとも襲うことだろうね。
……意思を押さえつけて操るなんて
いかれた手口だよ。
［一瞬だけ、目がすうと細められた。
ラウリの問いには大げさな振りを交えて回答する］
私かい？
私が分かるのは自分を飾らない獣のことだけさ。
隠している人間の本性なんて、知る術はないさね。
獣医 ウルスラ
ならない、だろうね。
操っている以上は、そこには操っている者の
意思が割り込んでいる。
狼をけしかけて邪魔者を始末させるってのも
思いのまま、ってことさ。
［そこまで言うと、改めて視線をやり］
そういうラウリは……
いや、聞くまでもないかもしれないけど
一応言葉で聞かせて貰えないモンかねえ。
［先程自分に向けられたのと同じ問いを投げる］
獣医 ウルスラ
ああ、犠牲が少ないうちに
どうにかしないとね……。
［ないうちに、とは言えない。
犠牲は既に出てしまった後なのだから］
ありがとう、内容は変わらなくても
一応の答えは聞いておきたかったんでね。
実際に聞くのと聞かないのでは、
気持ちも違うからねえ。
［ラウリの笑みに応じるように、口角を上げる］
獣医 ウルスラ
迷惑かも知れないけど、ドロテアだって
私らの心は分からない。
だからそれでいいんだよ。例え自己満足でもさ。
お互い様って奴だ。
［語る口調はどこか淡々としている］
……与えられた時間がないからこそ、
しっかりしないとね。
［去るラウリの姿を見送ってから
小さくつぶやく。
ウルスラもまたその場を*立ち去った*］
【独】 獣医 ウルスラ
/*
しかし吊り先どうすべかー。
死んで面白そうってのがアレなんだよな。
いつもいつも分からん。
ぶっちゃけ自分がｒｙなんだろうけど
自分以外から選ばないいけんから分からん。
【独】 獣医 ウルスラ
/*
狼吊りには早いだろうからとりあえず村人かね。
ラウリアルマウェルビャルネ。
あーそっか。
私と一緒に墓に落ちた場合に
それなり墓下が盛り上がりそうなところを
選べばいいのか。
コアもそこそこ合いそうな。
獣医 ウルスラ
［遠吠えが聞こえずとも、空は赤い。
それほどの凶兆が出ているのも無関係に
寛ぐ様子のトナカイの背を撫でる。
一仕事終えたばかりだが心が休まるわけでもなく］
まったく。
どうしたモンかねえ。
獣医 ウルスラ
何もないってのは、却って落ち着かないね。
こんな状態だからなのかもしれないけど。
［トナカイしか聞いていない独り言。
そういえば、とふと思い立つ］
ちょっと出かけてくるかねえ。
［出る前に少しだけ振りかえって見る。
容態に変化がないのを改めて確認してから
長老のテントへと向かう］
獣医 ウルスラ
［車椅子を動かすレイヨの声が聞こえた。
そちらを向き、ひらりと手を振って目礼に応える］
レイヨかい。
『も』ってことは、目的地は一緒みたいだね。
どうせなら一緒に行こうか。世間話でもしながらさ。
……とはいっても、今は物騒な話題しかないけどねえ。
獣医 ウルスラ
ああ、今はそんなのんびりとした話してる
場合じゃないからね。
［金属が軋むのに似た
車椅子の音をBGMに話を続ける］
本当だよ。
信じてもいい人間の方が遥かに多いはずなのにね。
疑心暗鬼、って奴なんだろうかねえ。
他の人間とは違う分かりやすい何かがあれば、なんて
ことも考えるけど、分からないから
まじないに頼るしかないんだろうね。
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