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[黴と埃の香りしかしないような、日の当たらない路地の奥に
『カレワラ』
という、ボロボロで、蒼いペンキ塗装の剥げかけた看板がある。
風が鳴る度に、辛うじて柱に繋がる釘たちがぎいぎいと軋んだ音を立てる看板の、真下。
看板よりは幾分しっかりと立て付けられた戸が開かれる。
中から出てきたのは、齢20に届かないだろう程度に見える、その『店』の、たった一人の従業員。
三白眼としか言いようの無い目は、常に機嫌悪そうに周囲を探っていた。]
[その店がかつて情報屋として機能していたと、知る者もいるだろうか。
10年ほどの昔、カレワラという名の、銀縁眼鏡をかけた壮年の男が幼い子供と二人で、生きていた頃は。
但し現在では、店の看板だけがそこにそれがあった証。]
……ウゼェ。
[靴音を鳴らし、細い裏路地を抜ける。
眼前に広がるのは、かつての都会。
廃退した町並みを潜り抜けてきた乾いた空気を吸い、不快を吐き出すと、白い帽子の下、短い眉が歪む。
数日前、その店に投げ入れられた『情報を売ってくれ』との短い文章を書きなぐったメモを思い出して。]
[丁寧に、『――支払う、――で待つ』と、大層な金額と場所まで記されていたそれ。]
……チッ。
[その文面を全てそのまま信じるわけではないが、廃業した情報屋を頼ってくる馬鹿の顔を見てみようかと。
きっと、そこに行ってみようとしているのは、そんな気持ちの筈だ。
もやもやとした感情を蹴散らすかのように盛大に舌打ちしても、何も変わらないまま。
生きる人間はもう少ない、壊れかけた世界。
足を向けるのは、書かれていた場所は、壊れかけたビル群を抜けた先**]
[一般人には伏せられ、秘密裏に存在していた某所研究施設の実験体。その研究室は、10年には届かないが5年以上前に、周囲20km圏に汚染物質が蔓延した為に閉鎖・破棄が決定。
研究者達は無事逃げたが、実験体達は、逃げられもせず餓えにもがき苦しみながら、一人、また一人と死んでいった。長い時をかけながら。
―――生き残れたのは、
何も運が良かったからではない。]
[薄暗く、昏く、腐敗臭が充満する中。
部屋の全面に、何処からか這入り込んだ蛆虫達がのたうつ中、同じく蛆のたかる同じ実験体の屍体を食べて生き残った。]
[―――砂塵と強い日差し、容赦ない雨風に晒されたように色素の抜けた色をした頭髪。血は滴っていないものの、両眼に巻かれた布は真新しくはない。]
どう…して……。
[小柄な人影に>>0、向けられた言葉。
会話をしていた訳ではなく、離れた場所から呟かれた独白であり、周囲に人の気配もあった。]
貴方も彼女と同じかしら。
誰かの為に、なんて。安っぽいヒロイズムで自分を捨てられるお馬鹿さん?
[くすくす]
[くすくす]
[風に乗り、嗤う声は遠く何処までも。
こんな時代だからこそ、誰を犠牲にしても生きねばならないのに]
――……本当に、馬鹿な子。
[まるで妹のように可愛がってきた少女へと。
呟く声は酷く苦いものだった]
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