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[ゆっくりと歩く足は遅い。
ドロテアの部屋へと向かうのはニルスがそこへいくといったからだ。
壊れていた扉が閉まっているのを見て、首をかしげ]
なにをしているんだか……
[そんな呟きを零した**]
[居間で行われる投票は、翌朝、開かれる。
だから一度は自室へと引き上げることにして]
ユノラフはニルスと一緒におるのか。
まあ、気をつけるべきだしの。
[二人へと一度視線を向けて頷き。
日が暮れる頃には自室へと上がっていった]
おぬしらを疑うものはまだおらんだろうて……
[小さく笑う。
夜になれば、また腹が減る。
食べようかと考えたのはウルスラだが――]
イェンニは、どうする?
[静かに、問いかけた]
[夜が明けるにはまだ早い時刻。
暗い屋敷の中は明かりをともさねば歩く事も難しい。
それでも、目が覚めてしまえばそれ以上寝ても居られずに。
居間へと降りて]
……どうなった、か。
[投票箱へと視線を向け。
中身を取り出す。
一枚。4枚。4枚。
かかれた名前は三人分]
ふぅむ……
[自らの名前がかかれた紙に視線を落し。
それから、同じ数だけそろった二人の名前を見る]
――おや、アイノ……
[そんなとき、投票が気になったのか。
名前をかかれた娘が降りてきた。
寝たのか、寝ていないのか。
それは分からぬままに――投票の結果を見た娘の反応に、わずかにため息を零し]
そうさな、お前さんの、名前だ。
どちらを、えらぶのかって……?
[さぁて、と首を傾げる。
娘が死にたくないと逃げるのなら、それはしかたのないことだ。
けれど――逃がす事のできる場所など、この屋敷の中にはなくて]
……クレストとおまえさんと。
どちらか、なんて、なぁ……
[ちいさな吐息を零し。
どちらかに、かたよっていれば、まだ。
決断はたやすかったのに。
そうでないからこそ。
怯え、恐れ、そして反抗へといたる娘の行動をみやり]
……恨まれてやるから。
向こうへ、先にいっておいで。
[今におかれた果物ナイフを手にした娘の手を捻り。
奪い取ったナイフを、そのまま、娘の咽喉に刺した]
かわいそうに、なぁ……
[止したナイフはそのままに、傷口から溢れる血の匂いをかぐ。
息耐えるまで、腕の中で抱きとめ。
二階へと、つれて上がることはできなかったから。
居間の隣にある、遊戯室のソファーへと、ねかせにいく]
― 夜 ―
[いいわけだと、そう紡ぐ若い狼の声に小さく笑う]
ああ……たしかに。
あの血の匂いは、な……
[その気持ちは分からなくもなく。
ゆるりと頷いて]
ならば、食べてしまおうか。
[怪我が酷いマティアスを。
人だといわれた者を]
― 夜 ―
そうそう、食べねばならぬ。
[逃げるためにも。
ゆらり、と姿を変じて。
灰色の狼が桔梗色のあとにつづく。
毛がおちたことには気づかぬまま、破壊された扉の間から控え室へと入り。
イェンニの食事の合間、怪我した男に食いついた]
……獣に食われるなら、先に食われていれば、よかったのにの。
[村の周囲の獣におそわれたのだろう。
傷跡に牙をつきたてて、血肉を食らった]
[深夜の食事を終えたあと]
……さて、見つからぬうちに戻るとするか……
[ついた血を舐め取るように毛並みを整えて。
イェンニを促して現場を離れる。
レイヨがおきているのなら、無理はしないようにと伝えて。
一度部屋に戻り]
[居間の隣にある遊戯室は、大きめのテーブルと、ビリヤード台。
そして幾つかソファが置かれている。
その一つにアイノを寝かせて、ナイフを抜いた。
命を落としても、まだ溢れる血が流れ出す。
手を汚す赤い色を眺め]
はやく、終らせねばな……
[手についた血を舐める。
血潮の味に、ゆるりと瞳を伏せ。
血に濡れた果物ナイフをさげたまま、遊戯室から廊下へとでた**]
― 早朝 ―
[アイノの血を舐める。
若い娘の血はあまく感じられる。
こんな無粋なナイフではなく、牙で引き裂きたかったが――]
さすがに、こんなじかんでは、の。
[狼になるにはもう夜が明ける。
なによりマティアスを食べたあとであるから、それほど飢えてもおらず。
ただ、もったいない、と深い吐息を零し]
アイノが、選ばれたぞ。
[そう、伝える声だけを届けた**]
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