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[悲しみを分かち合おうとしてか、ぎゅっと抱きしめてくれるホズミさんから身を離し、わたしは彼女に向かい合う。]
ホズミさん、わたしの事、心配してくれてるの?ありがとう。でもね、案じてくれなくても大丈夫だよ?
だって…ヨシアキくんは…。
[わたしはにやりと口嗤う]
わたしの力で殺したんだもの…。
[くすくすと、小さな声を立てながら――]
[彼女の様子が見えるたびに、感情がぐるぐると回る。
言うな、言うなと心の中で叫びながら。
ヌイの言葉も耳に入らずに]
俺は…俺はどうすればよかったんだよ!
こんな力…なければよかった…
[抑えきれずに、涙を流す]
[外で鈴木の姿を探している]
……果たしてナオさんや鈴木さんに、ヨシアキ君を殺せるだろうか
思えば管理人さんの姿を最初に見つけたのは、薬屋さんだったね。そして、いつも一人で桜を見上げている……
[かさりと何かを踏んだ感触に立ち止まり、地面を見る]
これは、利用者帳?
[ぱらぱらとめくると、利用者名に印や横線。鈴木の名前の上に引かれた横線に冷や汗が出る]
*/
[じりじりと、凍てつくような心地がした。
遠く遠く聞こえるのは、甘く、高らかに響く鈴の音]
知っている。
終わりなどないこと。
それはもう、さだめのように。
次々と喰らい、……使い捨てられる。
[それでも、魅せられていた間――どれ位の時間だったのか、長いようで、短いようなその間
男は確かにしあわせであったのだろう]
/*
ナオちゃん.......?
[これまでに見せたことのない表情を見せるナオに驚きを隠しきることが出来ない]
どうして.....あんなに仲の良かったじゃない.......どうして......
[ホズミは泣きながらにナオのことを問いただした]
[どこか遠い世界のようなそこで、“ナオ”が笑っている。
つられて男も笑い出す]
傑作だ。
[目を細め、女達の動向を見守っている]
[後ずさりするホズミに、わたしはにっこりと微笑みかける]
やだ…逃げなくてもいいじゃなぁい?
それに、ヨシアキくんは…自分の力を驕りたかぶりすぎたのよ?
悪魔祓いの家系か何か知らないけど…。世の中には御札の力が及ばない物もあるって――
どうして気付けなかったのかな…。
[わたしは横たわるヨシアキくんに近づき、彼が手にしていた札を見遣る。札は見る影も無いものに変化していた。]
…あんたに言うことじゃないよな…[自嘲して]
俺の…俺の心が弱かったからなんだよ…
彼女が人だと信じたかったから…
そして彼女が「人狼」なら、彼女の手で死にたかった…
[彼女の声が聞こえるたびに、でもそれは子供じみた感傷なのかと後悔して]
[足元を風が撫でる。桜の木の根元、舞い散る桜の花びらの中から、小さな人の姿が現れた]
鈴木……さん
[呆然と見つめた後、駆け寄る。所々に切り傷が見え、彼女はすでに冷たくなっていた。ぎゅっと唇を噛み、鈴木の身体をそっと抱きかかえようとして]
むかえるはとわのらくえん
[彼女の白い脚に書かれていた文字を口にした]
[泣きながら問い質すホズミさんに、わたしは困ったように視線を伏せて]
わたしだって…好きで殺したわけじゃないわ?
ヨシアキくんがわたしの事をそっとしておいてくれたなら。
[ヨシアキクンの許に跪き、彼の髪をやさしく梳いて]
わたしだって彼のたましいを貰おうとは思わなかった――
[遠く、桜が歓ぶ声が聞こえる。
死の恐怖が、無力感が、人々に渦巻けば渦巻くほどに、花が咲き乱れ、踊り狂うように舞い散る]
だから言っただろうに。
探すべきは人ではない何かだ、と。
[ひとたび言葉にすると、思いはとまらなくなって]
ごめんなさい。ありがとう。ありがとう。
[何度も繰り返しては、抱きしめる手に力を込めていく。そして、目の前のたましいと、それから、この闇の中の全てと交わるかのように、ゆっくりと意識を広げていった]
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