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ええ、尊き娘の命は捧げられましたわ。
でも、儀式はこんなにも血で汚れてしまった――
[ばっと風を切る音を立て立ち上がる。
その左手には弓、右手には矢。
右手の聖痕が浄化の光を放つ]
――だから失敗! 失敗ッ!!
救いなんかありませーんッ!!
[頭垂れる人々に向けて矢を放つ。
右手の四本が尽きれば祭壇を蹴り舞い上がった]
[生贄の少女は神に召される前に殺され、そして新たな血のショーが始まるのを、ビルの上から冷やかに見降ろしている。
飢えた少年も、翼の生えた亜人も。
首袋を振りまわす女も、全てが滑稽な舞台のよう]
…………ねえ、ドロテア。
あんたは私を怨むかしら。
あんたの決意を無駄にさせたのは、渡しだから。
[鳥が光って弓を放った。人は鳥に向けてすがる様な目線を向けたまま、弓の犠牲になっていく。]
あーあ、そんなに殺したら、ご飯が減っちゃうじゃないか。
鳥は、きっと馬鹿なんだな。
にいさまは、食べる分だけ殺しなさいって言ってたもん。
[死にゆく人には何の感情も覚えず、バラした足を咥えながら、鳥をじーっと見ている。]
[でもね、と言葉を区切ると醜い豚のような男へと蛇の眸を移して]
あんな男のために、あんたの命をひとかけらだってあげたくなかったの。
これは私の我がまま。
……ごめんね。
[最後の別れを告げて、ビルの屋上を後にする。
もう此処には用はないと言う様に**]
ふーん、あの人達は「すくわれたい」のか。
「すくわれる」ってよく分からないけど、あの人達、ちゃんとご飯食べてなさそう。
食べ物はここにいっぱいあるのにね。
[座り込んで足をバリバリ食べていたら、そこに弓が飛んできた。]
うわぁ。
[座って食べていたので、避けきれず脇腹を掠める。]
な…、なにするんだよう、馬鹿な鳥!
[首無く崩れた少女の亡骸を、三白眼は一度きつくねめつけ、視線を外す。
しかし、さて。
あの白羽はこれだけの量の群衆をすべて射殺すつもりだろうか。
食料にありつけた空腹人、その傍にあるか両目を隠す誰かも、同様に全てを捕食するつもりでもあるのだろうか。
逃げ惑う一部の流れに紛れ、その場を離れるも。
事の成り行きはどうだろうかと隠れ見守れる位置には留まるつもり**]
馬鹿な鳥……?
[ひく、と唇の端を痙攣させ]
黙んなさいよ、人喰いデブ!
ブクブク太ってるから矢も避けらんないのよ!
[少年の体型を口汚く揶揄する。
番えた矢を血塗れの口に向け、右手を放した]
― 双子ビル・中階層 ―
…喰いはじめたかア
[捕食者たちは、群がって儀式を朱に塗り潰す。
口唇の端から黒煙流す儘、軽業師の男が言ちる。
惨状を望む、街の意志めくうねりを見る心地。]
出遅れた奴は、待ち構えられて
デザートにされちまいそうだね?
[梁の上へと立上がりながら、遠くを見遙かす。
デザートと言いながら口にするコークスの塊。]
そろそろ、かな
[人の流れと来し方と――
引揚げ屋を営む奇人は、行先を定め動き出す。
常ならば出入りに難い場への侵入も易いこと。]
腹が膨れたあとは、さて…
みんな何が欲しくなるやら だ
んあ、話もせずいきなり弓を打つのは野蛮な馬鹿だよ!
[血塗れの口にむかって矢を放ってきた鳥に、怒りを込めて咆哮する。
みるみる身体が変化していく様子は、他人に嫌悪を抱かせるだろう。
異様に長い手、体毛一つない身体、赤い目に大きく裂けた口、黒い皮膚と、もしかしたら鳥=天使と対局の存在を連想させるかもしれない。]
痛いじゃないか!
[口を手で守り、刺さった矢から血が染み出す。矢を引き抜き、バリバリと食べ出す。]
馬鹿な鳥、黙れ!
[鳥に近寄って、長い手で相手を引っかこうとする。空中にいる相手に届くだろうか?]
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