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[音が届くとともに茶屋の光が一瞬失われる]
うひゃあ。
な、なに、なに?ナオちゃん、どこ?
ロッカちゃーん!?
[慌てて立ち上がると、すぐに光が戻ってくる]
あれ、…ナオちゃん?
…ロッカちゃん、ナオちゃんは?
[つい先ほどまでナオがいたはずの場所に彼女の姿はなく。呆けた顔で、共にいたロッカに問いかける。
そばの椅子には彼女の紺色の傘が掛けられたまま。その柄には、三つ編みの赤い紐が結ばれていた*]
[ホズミの言葉に、無言で空を仰いだ]
……なんなんだ、立て続けに。
[少し、途方に暮れた声がでた]
診療所まで、先に行くな。
[ケンの身体を揺するホズミの肩に手を置いて。アンの身体を下ろすと代わりにケンを背負う]
ワカバさん、怖いよ……
[雷鳴轟く中、大人たちの帰りを待つ。
そこにフユキの姿を見つけると駆け寄り、ナオが消えた一部始終をたどたどしく伝えるだろう。
そうして、入れ替わりに二人の無言の帰宅を知り、自分もまた両親の待つ家へと戻って日を跨ぐ*]
もう、全然分かんないよ。
偶然とかそんなレベルじゃありえないことだらけだし。
……本気で雷神様の何かなのかな。
とりあえずは、ここから離れた方がいいのかもね。
[珍しくため息をついてフユキに答える]
[ケンを背負って行くフユキ。代わりに降ろされたアンを支えるようにして]
とりあえず、帰してあげないとね。
[うおりゃと気合を込めてアンを背負いなおす]
校長先生のところ寄ったら、そっち行くわ。
じゃ、またあとで。
[首だけフユキの方に向けてそう言うと
診療所とは別方向へと骸を背負い*歩いて行った*]
[ため息をつくホズミの肩を、一度、二度と叩いて]
雷神様のせいなら、オレが後でけっ飛ばしてやるから。アンのこと、頼むな。
[また後で。ホズミの言葉に、しっかりと頷く、約束。
一度ケンの身体を背負い直すと、診療所に向かおうとして]
あ。
……ま、いいか。後で。
[ポケットの白い貝殻に一度視線をやったが、そのまま*走りだした*]
―― 翌日・茶屋 ――
[雨は降り止まない。
雷鳴は遠く近く、時に落ちる轟音さえする。
茶屋を営む老婆は、栗の甘納豆に砂糖を塗す。]
…あまり甘い香りさせると、
ご近所に申し訳ないわよ、かあさん
[帰省中の娘は、分校の校長宅で静かに営まれる
アンの通夜を手伝い、帰宅したところだった。]
うん うん…わかってる かあさんの気持ちは
[こんなときだから和みは必要だと言う母へ頷く]
[村の空気は、アンを悼む其れのみではなかった。
皆の目の前で倒れたケンの家もまた悲しみの裡に。
急逝――としか言いようがない。
ドウゼンも死亡診断書を書きあぐねていたらしい。]
でも どうして――どうして。
それがわからないうちは さ。
[そして、一瞬の停電の間に消えたというナオは…
学校の校庭で見つかった。
カミナリに裂かれ、黒焦げになった紅葉の下で。]
… ナオ もね やっぱり
傷ひとつなかったんだって。
[ボタンから箱詰めされた甘納豆を渡され、
ヘイケは眉を下げて困惑の笑みを浮かべる。]
…
私がしっかりしてれば、何か違ったのかな。
[何を悔やめばいいのかも定かでないままに]
… わかった
ワカバの家に届けるんだね
うん すこし話してくるよ
いってきます
―― 翌日・自宅 ――
…ただいま。
[ナオの自宅から帰宅すると、まっすぐ自室に向かい古びた学習机に顔を伏す。机とシートの間に散りばめられた写真には小さな村の数少ない学友たちの笑顔]
…ナオちゃん、ケンケン
[じわりと滲んできた涙を唇を噛んでやり過ごす。]
雷神様、二人に何があったの?
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