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……ちょっとだけ、さ。
がんばって、みよーぜ?
[へら、と笑う。
内に響く不協和音が大きくなって、それに自分の脆い部分が共振して、ちょっとヤバい事になっているような気がするけれど、そこは見ない、見ない。
……いや、見ない、で済む事態じゃその内なくなるわけだが]
[さわり、と。
風もないのに、枝が揺れる。
頷くようにも見える動きに、また、少し笑った直後]
……っ!
[鎮まる不協和音と入れ替わるように、違う不協和音が発生して、息が詰まる。
反射的に体を丸める仕種は、多分、結城は見知っているもの。
呼びかける声はどこか遠く、それに返す言葉は]
……逃げない、よ。
[やっぱりどこか、意味の通らないもので。
それに同意するように、また、木の枝が揺れた。*]
いっ…た……
[藤の根元にへたり込んで、手についた土を払う。
小さなへの字口は、涙を零す何時もの合図。]
……。
[微かに肩を震わせながらも、ゆらり立ち上がって]
…泣いてちゃだめ…。
行かなきゃ…。 ……。
[すりむいた膝も、汚れた靴とスカートも、今は意識の外。
鼻をすすり、薄紫を半ば睨みつけるようにして叫ぶ。]
お願い、私…。…私……。
――進矢くんの所に、いかなきゃいけないの!!――
[記憶に抗う事を忘れた今、彼の呼び名は幼かったあの頃と同じ。
散り散りだった幾つもの欠片は、一つの形となる。それは金色の小さな鍵――]
[花房達がさらさらと音を立てる。
一片の花弁が目の前を横切った後、視界に映ったのは…]
……六花、さん?
結城さんも… …!!
[花房の無い樹。その傍らに立つ二人の所へと踏み出して、初めて樹の陰に蹲る姿に気づく。
痛む足で駆け寄れば、恐らく看ているであろう人に]
結城さん!進矢くんは… 進矢くん…
[問うつもりが、言葉にならない。
その場に泣き崩れた*]
[呼ばれ、呼び返し、残る迷いが、花房をもう一度揺らして]
あ、ちょっと!
[後にしてきた泉の方へ、迷いの力が向かうのが判る]
[鍵を見つけた青年に、力が向かったのは、必然と言えば必然。でもきっと、本当は偶然?]
[だって、揺れる想いは、彼だけではなく、泉全体を揺らして、そこに居たものみんなを巻き込んでしまったから]
[友人も 巻き込まれたと そう判ってしまって]
もう...いつまでも、迷子になる年じゃないってば!
[何か キレました プッツン]
[そこに、優しく二人を見つめ助けようとする人達の姿を見つければ、ほっと息をついて]
[ぐい、と、頭をあげて、声を張る]
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