―横断歩道―
[歩道にイマリは来てるだろうか
途中にお楽しみBOXから[つぶ餡]を手に入れたものの待つのはやはり不安が襲う。
二度三度振り返り彼女を見つけたなら少し怯えた目で顔を見て語りかける。]
…イマリちゃん…助け合えば生き残れるの…?
私…どうしたらいいのかな…
[今にも泣き出したくなりそうで、けれど不安は募って…涙の雫は頬に垂れて伝う]
待って…?
[傷だらけの手足と青いチーフに懸念して、抱きつこうとする体を押し戻す。
触れた手はひやりと冷たく恐怖を覚えて警戒しながら後ずさり。]
ご…ごめんなさい…
でもその傷……どうしたの?
[武器もなく距離を離して逃げられるようにするもののイマリに不気味さを感じて様子をみる。]
そんな殺傷能力の高い物を持っていたら、自分は危険人物ですと言っている様なものじゃないかね。
[一人ごちて、去り行くイマリの後姿を、使い捨てカメラに収めた]
生きて帰ったら、ムカイの机に飾ろう。
強いとか…そんなのじゃない!
アンちゃん…、うう…
信じ…られない…
[名前のあがった級友は誰かに殺されたとは思ってた……投票の前に死んだのだからとそう考えて彼女の傷だらけの肌を見れば…りゅういちろうなのかイマリなのか殺したのはどちらかわからない。]
むかいくん…りゅういちろうくんを殺せば終わるって言ってた…
ちゃんとむかいくんのこと、信じればよかった…
[手を広げても素直に怖く、泣きそうになりながら感情が溢れそうになる胸を抑えてまたずさり、]
来ないで…人殺し…
[途中、木陰で歌詞カードを折り、紙飛行機を作って飛ばして時間をつぶしていた。
着陸した地点に落ちている、古ぼけた紙切れに気づく]
これは、地図……か?
[筆で書かれた文字は達筆すぎて読めない。
J=10の方を見て、思案顔]
助けに行くなんて約束は破るつもりだったが。
[手紙に描かれた図面は、この場所の地形によく似ていた。
いくつかの×印が、村中あちこちに示されている]
現金を持っていたらコイントスしてみたいシチュエーションだったな。
もしくは、こっくりさんか。
[一度屈伸してから、横断歩道へ向かって歩き出した。
リボンタイでくくったCDを、ぶんぶん振り回しながら]
[プレーチェの手には目立った武器は握られていない。
それを確認してから歩を進める]
ムカイなんて嘘つきは、信じなくて正解だ。
ぷーさん、君の判断は間違っていなかった。
[拾った地図らしきものを掲げて見せた*]
それよりこれを見てくれ。
何かありそうじゃないか?
かいちょーは、難しいこと言いすぎ。
殺すか殺されるか、だけだよ。
[溜息ひとつ。背中の手斧に右手を掛ける]
イマリ、ぷーさんの事嫌いだったけど、いまはよくわかんない。だってどっちかは死ぬもの。どっちでもいい。
でも、イマリは生きたい。
“向井雅史様”
[それは、女の子らしく少し丸目の綺麗な文字で。
宛名が書かれた封筒が届いた時の、嬉しかった気持ち。
少年自身は、大分、前に忘れていただろう。
──けれど、このふたつだけは覚えている。
返事を書こうとして。
何度も、何度も書いては捨てた手紙。
未だ幼く素直になれなかった少年は、結局、その返事を返すことが出来なかった。
そんな自分自身が、とてももどかしかった切なさと。
そして。]
“私、みんなの事、大好きだよ。離れても友達でいてね”
[その言葉。書き記された古い手紙は、今も机の引き出しの奥に仕舞われたまま]
─A02─
[もう動くことの無くなった学才服の身体。
爆発した首輪は跡形はなく。
血に汚れた胸の前、寝癖がついたままの頭を深く項垂れるようにして。
普段のように、眠っているように少年は廃屋の壁にもたれて座っている。
自分の選択肢が、どんな結果に辿り着いたか。
そらすら知らぬうちに、少年は時を終えていた。
──遠く。遠く。
静まり返ったエリア内の向こう。
誰かの慟哭が響いたのに呼応するように。
……ゆらり、と頷くようにその頭が揺れると。
静かに壁を滑り、その身体が倒れ。
それきり、その廃屋に音は無くなった。]**