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[アンはしばらく締める力を強めていたがやがて弱まり ルリの首に手をかけたままその場に泣き崩れた]
・・・・・・。
[泣きながら小さな声で微かに静かにその理由を話し出す]
イブを壊さなきゃ....
私はロボットじゃない・・・・
肉体じゃないのはこの手だけじゃない
この足も.....
この体もすべて作り物.....
もうこんな体で生きていくのは嫌....
こんな体になるくらいならあのとき死なせてくれた方がはるかにマシだった.....
私の願いごとは叶わない?
[箱の中から取出した、ハート型に折られたメモ用紙。
開くことなく、胸ポケットに仕舞った]
……ああ、あったね。
せんせー、パソコン借りるよ。
[肩に止まり、ホタルのように淡く光る蝶に頷いた。
入力するのは、ネギヤのオムライスにケチャップで書いてあった一文]
『歩き疲れても、まだ散歩の途中』
人はこういうとき、『何分経過したのか』なんて思ったりするんだろう?
悲しいことに、私は秒単位でわかってしまう。
[そんな話でオトハやユウキの気をそらしている間に、どこぞの配管工が1UPする効果音が響く]
32秒。
せんせーのパソコンも壊れちゃうんじゃないのこれ。
[研究所の明かりが消え、闇に笑い声が響く。
非常用電源が作動するまでの数秒間で部屋を抜け出して廊下を進んで行った]
[パンッ…
乾いた音が鳴り響き
部屋に硝煙の匂いが立ちこもる
胸からは機械としての透明な液体がにじみだし口からは真っ赤な人としての血がこぼれ出す]
「もぎゅもぎゅよくも裏切ってくれたのデース。役に立たない技術者などもうイラナイのデースだから死ぬのデース」
[細い目に薄きみ悪い笑みを浮かばせながらピストルを得意げに持つ
その男はネギヤと呼ばれる人物だった]
……ケホ……ケホ……ル…リ………ちゃ……。
[口をパクパクさせ何かを必死に話そうとする。
しかし言葉は発せずルリを包み込むように倒れた]
[泣きながら話すアンに、微かなその静かな言葉を静かに聞いて。]
…そっか。
本当は、したくなかった?
ホントに壊すつもりなら、ルリはとっくに止まってる。
アンのこと危険って思ったらルリの心はもうとっくに壊れてるはずなのに、今だってこんな風になってるのに、ルリはここにいるよ。
[慰めの言葉などは掛けない。ただ、事実だけを述べる。]
ねぇ。アン…
[泣き崩れるアンを受け止めるように抱こうとした時。
―――乾いた音が、した。]
……アン……?
[アンの体で視界が塞がれる。突然のことに状況が把握できない。
ただ、アンから流れる二つの温かい液体にただ事ではない緊迫した事態を感じ取り]
……アン!!
[視界の外から聞こえてくる声はネギヤのもの。]
ネギヤさん…?ネギヤさん、何したの……アン、ねぇアンってば!?
[必死に話そうとする声に耳を傾けるが声は、聞こえない。包み込むように倒るアン。聞こえてくるのは足音。
足音はどんどん近づいてくる。]
ネギヤさん…アンに何するつもり…だめだよ、だめだよっっ!!
[声に呼応するように。繋がったままのポケコン画面が表示を変える。]
―――『配線ガ正シクアリマセン―回路危険域―危険域―システム実行不許可―――――AI「イヴ」思考域ヨリ指令介入――システム実行セヨ――システム実行セヨ―――
――思考優先シマス護衛機能強制発動:護衛対象:アン』
[咄嗟に体制を変え、アンを庇うように抱え込み。
隔離室に、プラズマの光が舞った。]
……ひっ……!
[想像していたよりも強いそれに、思わず小さな悲鳴をあげる。]
―→隔離室―
[ローファーの音が廊下に響く。
一度も行ったことがない場所なのに、知っているかのように迷いなく歩いていた]
ロボットも案外便利かもね。
データがあればどうにでもなる。
[扉は易々と開いた]
やぁ、ネギヤさん。
ご飯残したら作った人に怒られますよ?
[男の背中に声をかける]
[蝶が舞い、止まる先でデータを収集している。
振り向いたネギヤの手に銃を認めると、ハツネは逃げた]
……アバヨ!
[薄れゆく意識の中にかつて記憶が走馬灯のように走り出す
そこには幼い少女の無邪気な笑い声とそれを優しい目で見守る父の姿があった]
パパ…
私は人間だよ……?
生き返ったんだよ…?
だからそんな目で見ないで……
ロボットなんて呼ばないで…
[事故により失った体と家族との絆
自分を見ては頭を抱え、悲しい顔をする父の姿が最後に浮かび上がり
やがて走馬灯はそこで終える]
……?うそ?護衛機能のプラズマってこんなに殺傷力高いものだっけ…?
……そういえば、配線正しくないとか実行不許可とかさんざん警告された……よーな……
[一瞬青ざめるが、そんなことを気にしている場合でないと気付き。]
そうだ…アン!!
[逃げようとした瞬間の閃光。
恐る恐る振り返った。
倒れているネギヤと、更にその先に二つの影]
ロボット?
[アンの絶え絶えの言葉が耳に届く]
……助けてやろうか?
[靴が浸る液体が何なのか、それはどうでもよかった。
ルリとアンを見下ろす形で、無表情に立ち尽くす]
アン…しっかりしてよ…!
[アンを支えて声を掛け続けている。
部屋に入ってきたハツネに。]
ハツネ……
たすけること、できる…?
胸、撃たれて…生体部分と機械部分があるみたいで、どうなってるのか、ルリじゃ、よく、わからなくて…アンが……危険な人じゃ、ないんだよ…ハツネ。助けるの、できるの……っ?
[見下ろしてくる形のハツネを見上げて。]
私の邪魔をしないって約束するなら、せんせーに頼んであげるよ。
[答えを待たずにアンを抱え上げようとした。
手も足も、血に滑る]
ルリちゃん手貸して。
背負って運んだ方が早いと思う。
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