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ん…?私?
なに言ってるの、華なんて、何処に。
[ひらりと手を振ってから苦笑を浮かべた。
化粧っ気の無い顔、若者らしからぬ髪型と言っても良いであろう結い方、地味な服装。
余程ロッカの方が華がある。
でも、百合や蘭などというよりは、道端に咲いているたんぽぽがよく似合う、と思ったりもするのだけれど。]
うん、午後はもうすぐ。
帰ってお母さん、手伝わないと。
[元々は父親がやっていた店だった。
幼い頃に父親が亡くなり、母親がその店を引き継いだのだった。
だから、幼い頃から彼女はいつもお店を手伝っていた。]
[ふらふらする、くらくらする。
三半規管やられた時の症状に、かなり近い──なんて。
悠長に考えられていたのは、ほんの僅かな時間]
……ちょ、ま、て。
[目の前に、ナニかいる。
普通に考えて、あり得ないモノが、何事か捲くし立てている]
それ、なに……どゆこと?
っていうか、お前、なに?
[問いかけても答えは得られず。
綴られるのは、一方的な言葉たち]
っ!?
[直後に響いた砕ける音と絶叫。
耳を塞ぐのも間に合わず顔を顰め、次に何か事件でもあったのかと辺りを見渡そうとして]
…… え――……
[身体が傾く。否、傾き歪みだしたのは世界の方だった。
立っていられそうになくて、その場に蹲る]
『あ、それと君には修復に必要なものを集めるための力もあげるから、頑張ってね』
はぁ? ふっざけんな!
訳分かんねぇことばっか言ってんじゃねぇよ!!
[兎が消える直前、何か言ったのに怒鳴り返す。それが口から出たものではないと言うのは知らぬまま]
『……ああ、それとね。
キミには、ひとつお仕事頼みたいんだ』
[一通り話した後、兎はこう言って、わらった]
……は? 仕事?
『想いの力を集める仕事。
強い念に向けて、力を飛ばしてくれれば、時計まで誘導するから』
なんだよ、それ。
『じゃあ、お願いねー』
……お願いねー、じゃ、ねぇよっ!
「ココロノワスレモノ」「元の時間」いったい何・・・
[兎のいったことは何一つ理解できなかったが、そんなことよりも、]
・・・ひろ・・・
[どこかに行ってしまった息子のことしか頭にない。
周りの様子も目に入らず、まさか「どこかに行ってしまった」のは自分の方などとは思いもよらない**]
ロッカちゃんも、久し振りに来―――っ
[ロッカへと誘いの言葉をかけたその時、時計の音が聴こえた。]
な、何…?
[この音は何処から聴こえてくるのだろう、わけもわからずに周囲をぐるりと見渡して―――…、そして、何かが壊れるような澄んだ音、絶叫。
次の瞬間、世界がくるりとまわって、目の前には… ]
う、うさぎ…?
[暫くの間、茫然として何も喋る事はできなかったか。
喉の奥から絞り出すような声を漸くあげた。]
― 駅前公園 ―
クッ。
[確認するまで目を開け続けていられなかった。
世界が回っている。自分が回っている?
酷い船酔いのような感覚にきつく瞼を閉じて、数を数えながら深呼吸する]
……や、ここ、とお。
[声に出して大きく吐き出し、ゆっくりと瞼を上げた]
─ 公園傍の道 ─
あんのクソ兎…。
……てか何で兎が喋る。
[空いた手で握り拳を作り震わせていたが、根本的な疑問に気付き一度呆ける。不意に視界に入ったのは、公園の中にある子供達の像だった]
───え、壊れて、ない…?
さっきまで欠けてたはずなのに。
[驚きいて目を円くし、ぽかんと大きく口が開かれる。次いでさっきまで居た商店街へと視線を向けると]
…看板、まだ新しい…。
え、なに、が───。
[立ち並ぶ商店の中に、真新しい看板を掲げた店があった。あの店は確か10年前に建て替えたのではなかったか]
ほんと?お邪魔しよかな、今夜。
青海亭のご飯、美味しいんだもの。
この間、省吾オーナーにも紹介したんだよ。
何かとお世話になっているし、お礼に奢―――
…?
[ふと聴覚が違和を捉え、言葉を切る。
チカノに据えていた視線が周囲へ向いた。]
ね 何か聞こえない?
鐘みたいな、 時計みたいな………
[突如鳴り響く音。
何処から聞こえて来ているのだろうと見回すが、分からない。]
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