[でもあの日。出会った知らない大人の人に、サクラちゃんが連れて行かれた先は病院で]
この箱に入れてるなんて、
サクラちゃんは…
… やっぱり、自分で、知ってたんだ
[遊びになんて行けない事を]
[あの頃よりも大きくなったような、変わっていないような、桜の木に近づいてその樹を撫でた]
ここにくれば会えるんじゃないかって、思っていたんじゃないんだ。
[涙を堪えてしゃがむと、視界に傷跡が入る。
樹に彫られた、おさない文字の相合傘]
ここに来たら、会えないって認めなきゃいけないんだって、思ってた。
[最初のきっかけは、マコトの進学だった。
有名進学校に通うために引っ越すことになった
マコトに彼女は]
(おめでとう)
[そう言った。それが別れに繋がるのは
どちらも気づいてたはずなのに]
全然めでたくなんてなかったけど……
そういうことだったのかな。
[後の自分をマコトに知らせるのが嫌で。
病気になったと思われるのが嫌で]
――でもね、サクラちゃん。
僕は今でも、君のことが好きなんだと思う。
ごめんね。
[強く吹いた風が桜の花びらを散らした。
蓋を閉じた小箱の中には、きっぷと、それから花びら]
[そしてもう一度]
[改めて、呟いた]
ただいま、サクラちゃん
[そして]
……
[*呟かれた別れの言葉は、サクラの木へと、静かに消えた*]