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俺の思い出は……どうなんだろうな。
[一通り話を聞き終えると
しばらく押し黙った後で小さく呟く。
別れの思い出を欲する自分を顧みて]
多分手に入る思い出は
愉快な思い出じゃないだろうけど。
それでも、俺は……
それでも、やっぱり欲しいと思うよ。
[その小さな心の叫びを聞く者はいるのだろうか]
[小さな社でも、御神籤はあるようで。
料金箱にいれて好きなものをひけばいいようにしてあるのを見る。
考えにつまって、気分転換にと一つ、ひいてみた]
……末吉。未来を見据える時期……か。
[末吉とかかれた御神籤にはあまりながながしい文章は乗っていない。
読み上げたそれに、考えるように眉を寄せた]
え? 思い出屋に遭った?
[焼き鳥屋から数日後。
横丁にある金物屋へ偶々足を運んでいた時に耳にした噂。]
バック転する程って確かその人って…
[酔った席での記憶なので曖昧だが、言える事は間違いなくバック転など出来るような体型ではないこと。]
無事、町内会費でも徴収できたのかしら?
[噂の伝で聞いた話を思い出す。
確か彼は思い出を欲していなかったはず。]
う〜ん、この情報ってみんな知ってるのかなぁ?
何はともあれ、焼き鳥屋にいった方が良さそうね。
おなかも減ったし。
[腹が減っては云々。]
あ、おじさん情報ありがとう。
え? やだ、焼き鳥屋のおじさんから聞いてたの?
んー…そうね、思い出屋に逢いたいのは、
むしろあたしじゃ無くて――…
[言葉を切り、金物屋へ渡した品物を見る。
常盤緑によく映える――]
まさかこんなのまで直せると思ってなかったからね。
ちょっと嬉しいな! じゃ、お願いします。
[ブーツの靴音が横丁に響く。
噂は本当だったらしい。]
んー、他の人の情報も聞きたいなー。
[角を曲がり焼き鳥屋を目指す後姿に、
何時ぞや引いた御籤の[大大吉]文字が、道端に落ちた**]
[小さくため息をついて、お御籤を胸ポケットへとつっこんだ。
人があつまる場所にいけば、より詳しい話が聞けるかと、先日足を向けた焼き鳥屋へと歩き出す。
編集者が立ち去ったあとの社は、ひっそりと静まり返っていた**]
[今日も先日と変わらない、古めかしい音]
あれー? 奇遇だねー。
[マフラー姿を見かけて、眦を下げる。]
おじさん、せせりとビール。
[威勢のいい声と同時に差し出されたお通しに早速箸を付け]
ねぇ、思い出屋の話、聞いた?
[お絞りで手を丁寧に拭きながら、マフラー姿の者へ訊ねる。]
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