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―― ひまわり迷路 ――
4人もひとが居なくなるなんて。
[例の手紙をおみくじのように細く折りたたみ、ひまわりの茎に*結びつけた*]
今年も誰かがいなくなるの……?
うん。
……おじさん、去年も居たよね。
道 を知ってるの?
[躊躇いがちに問う。
神社の子供は、
言い伝えを半端に聞いているらしかった。
そろりと差し出そうとした手の上をひらひら、蝶が飛ぶ。]
探しに行きたい。
[ちょうしっぱずれの旋律が耳をうつ。]
音楽は儀式。言霊は力。
くるくる唄うと、さて如何なることやら。
[向日葵の迷路へ出掛け、女学生は帰らなかった。]
ふふふ。
では。貴女の未来の素敵な殿方に、立候補しても?
[顔の下半分を覆うマフラーの上から更に封書でもって、口元を隠す。]
[わらいごえ]
ねぇお母さん、今年も盆踊り大会ってあるの?
[夏の暑さに項垂れるように、呟く]
だって人が三人も居なくなったし。
[投げ出した足許に、去年と同じく散らばる花粉]
[また手許に届いた封書を透し見て。
無造作に体を起こしては、向かう先にひまわりの花畑]
若旦那だなんて。
一体どんな経緯でついたあだ名かしら?
[すれ違う、顔見知りとなった子供達のからかう声に
小さく口角を緩めては、優しく空気を揺るがして。]
あの、不安げに呟いて居た女の子は。
今年もひまわりを見ることが出来たかしら?
儀式……
私が歌うから、神隠しが起こるとでも?
[小さく首を傾ぐ]
歌にそんな力、あるかしら。
[友達が帰ってくるようにというクルミの願い、歌は叶えてくれなかった。
あの日共に居たカナの行方、歌は教えてくれない]
そんな力、在ればいいと思うけど。
[口元を隠す封筒、やはり、と視線を地面に落とす]
ふふ。だったら、ね。
[立候補という相手の顔を覆う眼鏡に指を伸ばし]
その顔、見せてくださる?
その姿じゃあ……本当にアナタが「レンさん」かわからないわ?
[わらいごえ、に返すのは、弧を描く鮮やかな紅。
結局指は、相手に触れずに降りるのだが]
私は、ね。
神様は居ればいいと思う。
そうしたら……
捕まえてみんなを帰して貰うことも、出来るものね?
――――、うん。
約束。
[“おおかみさま”の面を持ち上げて見上げて、硝子の向こうの眼を見て謂った。
遠い祭り囃子。
不思議と蝉の声は途切れていた。]
[ひまわり迷路の前。
人生に迷いがちな姿が、長い影を作り出す。]
人狼童子、ですって。
一体どんな物語だったのかしら?
[消えた者が携えて居たと、噂に高い台本を手に。
懐かしむように目を細める。
自らの手は汚さずに捧げた身の存在を。
今は知る由も無く。]
まあ、ね。
神様の力に比べれば、劣るのだろうな。
[首を傾ぐ姿に、]
ただ。道をくるくるにするか、まっすぐにするか。
屹度、それくらいは……ね、……
ん、しかし……、
考えてみれば、”音痴”という宜しくない要素も関係するのだろうか。
[ぽつっ。相手に対して失礼までも口にした。]
…顔を?
[弧を描く紅を前に、数拍の沈黙の後]
望みは繋げておきたいからなぁ。
では、これっくらいだが。どうぞ勘弁願いたい。
[指先で押し上げ、少しだけずらした眼鏡の端より、
ちらりと現れた瞳は、蒼。]
ワタシは、レン。いつもいつまでも変わらないよ。
[眼鏡を、元の位置へ戻した。]
ふふふふ。そうかい。良い心構えだ。
神様の捕獲に挑戦してみりゃ、いいさ。
[笑声の尾をひきつつ、盆踊り会場の方へと*]
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