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[食堂へ向かう途中、入り口でゼンジの後姿を見かけた。
呼び止める暇もない。足を止めてそれを見送る]
どこへ?
[呟いてから、何かに気づいたように、あらぬ方向を見た。
虚空を見つめる猫の視線に似ている]
さかなは空に小鳥は水に
タマゴがはねて鏡(かがみ)が歌う
まっくら森は不思議なところ
朝からずっと
まっくらクライクライ
[つと足を止めて見覚えのある建物に首をかしげる]
あら、ペンションじゃない。
あ──私と、アンちゃん──。
[樹の下に横たわる見るも無残な死体を悲しげに見下ろし、近くにアンが居ないか視線をさまよわせる]
居ない、か。アンちゃんは天国に行ったのかな?
……あれ。でも、私、何で死んだの?
[こめかみに指先を軽く当てて眉をひそめる]
覚えてない……やだ。熊とか、野犬?
[不安そうに立ちすくむ横をゼンジが通り過ぎていく、その視線は決して自分には止まらない]
ああ、やっぱり見えないのね。若旦那さん、どこに行くのかしら。
[寂しそうに微笑んで見送る]
気をつけて行ってらっしゃい。
―車中―
[あの場に漂っていた臭いを思い出し、時折顔をしかめた。
カーラジオは陽気な歌謡曲を流している]
あ……?
[急ブレーキを踏み、身を乗り出してプレートに書かれた文字を読んだ]
ペンションまであと5km
[いつの間にか、出発したはずの地が行き先になっていた。
ここまでは山道とはいえ、一本道だったにも関わらず]
[車の音に気が付いて、玄関へと向かう。何となく一人にしてはいけない気がして、ルリの手を引っ張って]
ゼンジさんかしら?でも。
まださっき出て行ったばかりなのに……。
あら。セイジくん!おはよう!
[外へ出ようとする、見覚えのある後姿に、声をかける]
[戻ってきた車とゼンジの様子に不安そうにみつめる]
若旦那さん、大丈夫?
いつもの余裕のある笑顔が消えてるわよ。
あら、セイジ君も来た。
熊や野犬の仕業なら、ゼンゼンとセイセイでコントしてる場合じゃなくて、ペンションに早く入った方がいいんじゃないかしら?
ゼンジさんも、おかえりなさい。
どこに行ってらしたの?
出て行ったと思ったら、すぐに戻って来たけれど?
[声をかけながら、何だかゼンジの様子がおかしいのに気付く]
おはようございます。ボタンさん。
僕は少し、ああ、どうでしょう。
[連れられたルリを見て、あからさまに逡巡して]
僕はこれからちょっとへぶ!
[ゼンジに右頬を叩かれる]
コントしたらすごいと思うけどね……。
むしろコントするくらいの方がいいのかしら。
あらら、ボタンさんも来たわ。
ルリちゃんひとりぼっちなのかしら。
うーん。誰にも見えないと言うのも、切ないわね。
[苦笑すると、手持ち無沙汰そうに歌を口ずさみはじめる]
[ゼンジがセイジをたたくのをみて]
な、何するんですか!?ゼンジさんっ。
大丈夫?セイジくん?
[オロオロと、二人の顔を見比べている]
痛い……。
[殴った右手の平をじっと見つめる]
この道ずっと走ってたのに、ここに着いた。
[現れた人々に事の顛末を説明しようとしたが、出てきたのはそんな言葉だけだった]
えぇー!?そ、そりゃ痛いですよっ。
というより、セイジくんも痛いですけど!?
は?何を言っているの?ゼンジさん。
[『ずっと走ってたのに、ここに着いた』という言葉の意味を図りかねている]
何を言ってるんでしょうね。
ここまでの道、覚えてますか?
曲がり道ではあるけど、ずっと一本なんですよ。
[説明はやはりそれ以上のものにならなくて、苦笑を零した]
ああ、どうしようかな。
電話も繋がらないんです。
そんな確かめ方ー!?
[ゼンジに抗議。
更に言う前に耳打ちされて、誰もいない場所を見た]
……ああ。そう、ですか。
[辛うじてそれだけ呟いて、睫毛を少し震わせた]
──耳をすませば何もきこえず
時計を見ればさかさま回り
まっくら森は心の迷路(めいろ)
早いは遅い
まっくらクライクライ
[ボタンの影にルリを見とめて]
あ。一緒だったのね。よかった……のかしら。外は危ないわよね?
[ゼンジとセイジのやり取りを耳にして眉をひそめる]
何が起きてるのかしら? お化けも居るしね。
[冗談めかしてつぶやくと、肩をすくめた]
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