[部屋に閉じこもる夜の時間が明ける。扉を開けると、ペケレが駆けていき、そして]
…違う。ケーサツ。
[部屋に戻る。携帯の電源を入れる]
もしもし…。
チカノン…?
[力の入らない足で、広間に向かうと目に入ったのは右手を高々と挙げた人物]
チカノーンっ…!
[遺体を飛び越え、喜びの突っ張り<26>連発]
……つーか……
[意識が少しずつはっきりとしてきた。
『痛い』が頭の大半を占めてはいるが、思考をめぐらせると……]
……ポケット、に、入るサイズの鞘入り、ナイフって……そんなに、刃、でかくねえじゃ、ん……?
[初日にナイフをカッコイイと思った記憶が蘇る。
自分の身に起きた事を把握していくと、不思議と冷静に思考が巡る。]
……ココに来たときのあの臭いが血の臭いってコトは多分、このナイフで……傷、そんな深くは、ねえ………?めちゃくちゃ痛え、けど……
杏ちゃん、と、背高の兄ちゃん……様子……を、動けるヒト、よく、見て……くれねえか……刺された場所、何処だ……
致命的な場所で、なけ、れば……
[見に行こうと体を動かそうとするが、意思通りにはなかなか体は動かず。時間をかけてやっと、上体だけ起き上がれただろう。]
杏ちゃん……!!!背高の兄ちゃん…!
[動けはしないがせめて声をと、今出せる限界の声で呼びかける。
杏を呼ぶ声のほうが明らかに大きいのは、気のせいではないはずだ。]
持ってきた。
ばっくんはとりあえずこれ飲んでみて。
[気になっていた薬包紙の中身を口を固定して流しいれて]
吐き出すんじゃないわよ。
はい、お水。
[コップを渡すと救急箱を開ける。[包丁][ブラジャー][ライター][ライター][刃渡り15センチの軍用ナイフ][血塗れたタオル][刃渡り15センチの両刃ナイフ]等々]
えーと…。
痛い。イマリ痛い…。
[23発くらいは耐えて見せたものの、
残りの数発は思わず身体がのけぞってしまう。手刀一発。]
だが痛みも生きていてこそとは、このことではないか。
[抱きしめ返そうとして手がインクまみれなのに気が付く。
イマリのほおをなぜるふりして、さりげなく無惨な姿にしてやった。]
[救急箱を展開するイマリに]
それホントに救急箱……?工具箱じゃなくて?
そこら、へんの……カーテンやら、クロスやらの布でも切って、包帯にすれば、いいんじゃね?刃物はライターの火で滅菌消毒してから、な……
[少し痛みが鈍くなってきたように感じるのは気合によるものなのだろうか、それともミルキー味の何かのせいだろうか。]
[鋭い痛みから鈍い痛みに変わり余裕が出てきたのか。
腹を押さえながらよろり、と立ち上がる。]
うわっと……
[ぐらんぐらんとしながら足を進める中、救急道具と称した道具箱に足をとられた]
とっ、とっ、とっ……おおおおっ!?
[バランスを大きく崩してふらつき、
倒れているンガムラの足に盛大に引っかかり
大きな音を立てて倒れた。
倒れた瞬間、手は杏の腕のあたりに強く当たって、その体を大きく揺らしたかもしれない。
倒れた衝撃で再び腹部が激痛。また立ち上がれなくなった。]
……うう……
[バクが倒れた衝撃か。
ほんのわずかに、そこから声が漏れる。]
こ、これって……
どういうこと……?
なんで、あたし……
のっぽ。
おまえもか。
おっさんは詰めが甘いな。
どれ。どこをやられたのだ。私に診せてみろ。
[その男もまた呻くような声を挙げた。
歩み寄ってのっぽの身体を跨ぎ、仁王立ちすると。
身体を屈めてその服をひんむきはじめた。]
イマリ くん ぶじか ?
[近くにいるかはわからない娘の名を呼ぶ]
しょうぶは どう なっ た ?
[勝ったか、負けたか。
自分は、騙されたか。
今残る興味は、それくらいだ]
ははは。のっぽ!
ナイフが幅広だったのを悪魔に感謝するといい。
傷口は…
おまえの二本の肋が受けとめたようだ。
肺は傷ついていまい。それだけ喋れるならな。
…運の良いのっぽだ。
[ひんむいたのっぽの胸から夥しい血が流れ落ちている。
しかしそれは、まるで少女の表情のように明るく軽く、それが静脈からの出血だと知らせていた。少女は両手わきわきさせて言う。]
さあ。他に傷がないか調べてやろう。
…おまえは守りすぎなのだ。
逃げる?ばかな奴め。のっぽ…
その傷の対価を得ねば、一生祟らるぞ?
―― 数日後・某集会所 ――
おっちゃん、安らかにお眠り下さい。
[なむなむ、と念じながら、受付で渡された白い封筒の口を開く]
……え?
[御礼状だと思った中には、タロットカードのような何かと、絵柄の説明が書かれた小さな用紙。
村人を示すそのカードを慌てて伏せて、あたりを見渡す]
『それでは時間となりました。
ただ今より――』
「受付にいた男性が室内にやってくると、そう告げた。
室内にいるのは、8人。
壁時計は、12時を報せる――**]