[裁判官か、と問われた声の質には気づいてはいたけれど、視線を落として肩をすくめるのみで]
他に?
ああ……
[視線を扉の方に向ける]
疑われている者同士、顔を見ておくのも悪くないか。
[嫌でも顔を合わせることになるだろうから。返す言葉も独り言のような*声*]
[普通の家で普通に育ち、
普通ではない状況に置かれた娘の身を案じ
悲しみを隠せない両親と兄弟。
なにせ、魔女裁判の容疑者が無事に戻った例は
聞いたことがないのだ。
知られていないだけなのか、
本当に「いない」のかは分からないが]
……じゃあ、行ってくるね。
[戻って来る、とは言えなかった]
[裁判所につき、
まず自分にあてがわれた部屋へと向かう]
ありえない……
[いきなり魔女の疑いをかけられ、
牢屋をあてがわれた娘の感情は
怒りとか悲しみとか――
そういう単純な言葉で表せるものではなかった]
―自宅―
……魔女裁判?
[来訪者へ向けた瞬きは、
どこか場違いにゆったりとしたものだった]
本は、持ち込んでも良いの?
昨日の夜に読み切れなかった奴があるんだよ。
[悲嘆すらなく。
やがて、男は"裁判所"へと足を向ける]
―裁判所―
イルマ…?
[自分より少し先に到着したであろう、昔馴染みの娘の姿を認めた。同じくごく普通に村で生まれ育った男にとって、歳近い彼女はよく話をする相手であり]
君が魔女だなんて知らなかった。
魔法が使えるなら、
もっと早く教えてくれればよかったのに。
[真顔でとんでもないことを言うのも、いつものこと。悪意がないことは察してもらえるかもしれないが、感情が渦巻いている彼女へは少々無神経すぎる発言だったかもしれない]
-法廷-
俺と同じ状態って訳か。
…お互い、不運なこったな。
[ユノラフの返答>>19に小さな声で。
よく店に来てくれていた客とこんな所で顔を合わせるのも妙な気分だった。]
…此処から出たら払って貰おうかね。
[ツケの単語にはそう返した。
此処と、法廷を見回して、漏れたため息と共に。]
…他の奴らもいるのか。
まだ顔を会わせてなくてね。
嫌でも顔を合わせる事になる、ってのは同意だ。
疑われる…な。
まったく…。
どういう事なんだか。
[ユノラフの独り言めいた言葉>>20に言う。]
魔女なんて――
[いるわけない、とは、言えなかった。]
ちょっ……何言ってるの!
そんなわけないじゃない!
[クレストの発言に動揺して怒鳴りつける
しばらくすれば、多少落ち着きを取り戻して]
というかクレストにまで
魔女疑惑があったとはね。
男でも魔女だって疑われるとか
どういうことなのか理解できないわー。
[親しい者の姿に少し安堵するが
それは決して喜ばしいことではない。
どちらとも、いつどうなるか
分からない身なのだから]
冗談言ってみたけど、元気でなかった?
[怒られたが、反省はあまりしていないようだ。相変わらずのんびりと続けて]
そうだねぇ。
男でも連れて行かれることは結構あるみたいだ。
お客さんからの話だけどね。…噂は、よく聞く。
[最後は、やや神妙な顔つきとなった]
僕は変わり者って言われているしね?
イルマこそ、どうして疑われたんだろう。
…でも、大丈夫。なるようになるよ、きっと。
[根拠のない慰めの言葉と共に、娘の頭を軽く撫でた]
そういう奴だと知ってはいたけど
まさか、この状況でそんなタチの悪い冗談言うとはね。
……とりあえず、呆れたのは間違いないわ。
[やれやれとばかりにため息をひとつ]
そうなんだ……。
だけど、いくらクレストが変人でも
魔女とか、ちょっとね。
どうでもいいことにしか使わなそうだけど。
……ひょっとしたら、誰でもよかったのかもね。
ありがと。どうにかなれば、いいんだけど。
[クレストの撫でる手はそのままに返事をした]
ん。何人か連れてこられてるな。
[扉の開く音、閉まる時の僅かな振動。
現場を見なくても、何が起こっているかは想像に難くない]
あいつらの理由なんて、聞いたところで納得出来る気がしねえが。
[ミハイルから視線を逸らす。
それは座っている向きにまっすぐ顔を向けただけではあったけれど]
――いねえよ。
[相手が飲み込んだ言葉を、意気込まぬよう、口にした]
少なくとも、俺は魔女じゃあ、ねえし。
お前は――
[疑問のような、確認するような、視線を向けた]