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死者。
[目覚めてから何度か聞いた言葉。
上着の内ポケットから、アンの落とした手紙を取り出して皺を伸ばす]
アン、手紙……。
[封は開いているのに中身を見ることが出来ずにいるそれを、誰に渡そうかと逡巡する]
…そうですか。カナメ。
これはまた、おはよう、のある、ねむりですか。
[そして]
結びつき…?
[向こうの世界から、
そんな言葉が漂ってきたかもしれない*]
[己の墓碑へ手向けられた、いろえんぴつの青い花。
視線を遣って…影は淡く明滅する。
青い花が、青いから。
男の世界では、青い花はずっとずっと乾涸びていたから]
死に絶えなければならないのなら、
死に絶えればいい…私はそう思っていますが。
生き延びる方がお出でなら、
しあわせに生きて下さるといい…
[気持ちが悪い。吐き気がする。頭が痛い。鼓動が速くなっているのが、わかる。
眠るか何かしたのだろうと。
頭ではわかっていた。だが、何故か、どうしようもなく揺さぶられる]
死なないように殺しながら、それでも。
[レンが口にしない酷い言葉で]
[レンが果たせなかったことを]
――どうか、どなたもお風邪など召さぬよう…
[やわらかく密やかに、願う*]
へいき?
[寝息を立てるペケレを一歩離れて見下ろしてから、後ろを振り返る。
ユウキの姿が見えれば、*名を呼ぶつもりで*]
[己の部屋へと戻る足取りは重く、半ばも行くか行かないかのところで止まってしまった。壁に背を預け、そのままずるずると座り込み]
……カナメ。
[俯き、呟くようにそれを呼ぶ。返事があったかないかのところで]
カナメ。
[もう一度、呼んでから]
何だか、何かを思い出せそうな気がする。
何かを思い出しそうな、気がする……
気持ちが悪い。頭が痛い、……
[弱い声で続ける。ぐ、と拳を握り締め]
どうしたらいい。
こういう時は、どうしたらいいのか……
教えてくれたまえ。
苦しい。
思い出せそうだというのに、酷く苦しいんだ。
[すがるような問いにカナメは沈黙の後、返す。「思い出さなければ、いいんです」と。
どことなく遠く聞こえるそれに]
駄目、だ。思い出さなければ私は……
私は、私が誰だったか思い出せない。
[テンマの言葉に]
…ふぅん。穏やかじゃないな。
感じても。言葉と意味が繋がっても。記憶と言葉は、記憶と意味はまだ繋がらない。
お前の含みが意味するもの。なんだろうね。
記憶の鍵、ね…。何が眠っているのかね。
再び結びつけば……死、かい?いずれにせよ。
[心に浮かんだのはそんな言葉。何が、との主語は、思い浮かばなかった。]
…まぁ、いいさ。当たり外れなんてどうでも。
ただそう感じただけ。
俺は、俺の感じるままに。今までも、これからも。
今この時は。ここから見守るだけだ…*
「貴方は、ライデンですよ」
私は……
「忘れてしまいなさい」
思い出したいんだ、
「思い出す事が幸せとは限りません。
……気分が悪いのは、頭をぶつけたせいでしょう。
あのドクターに診て貰った方がいいのではありませんか?」
[話をそらすカナメの声は奇妙に優しく]
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