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お、お帰り〜。出戻りって言葉、いいねぇ。あたし好きよ。
……って随分若い子をナンパした割には渋い所に連れてきたのね。
[ガラガラと忙しなく開閉するドアに、時折鋭い視お線を向けるも、
姿を確認すると、口調はまた陽気な酔っ払いの戯事へと変わる。]
レバーにお冷って…。もうちょっと渋くいこうぜ? 若者よ!
それに、あたしはまだ全然完璧ら仕上がりひゃにゃいっちゅーの!!
[新しく席に着く姿が、マフラーを少しだけ下へとずらした姿を盗み見て。
口調はどこまでも酔っ払いのまま。]
……。
[テンマの小皿に自分の砂肝を一つ入れる]
ねえ。テンマ。
[意識をこちらに向けようと、男の腕をつんつん]
あなたなら、どんなものを差し出す?
噂の真相?
[眼鏡男が口にした理由を鸚鵡返し。
疑問に思うがそれはすぐに周りのざわめきによって明らかとなる。
「思い出屋」。レトロな横丁に響く似つかわしい不可思議な名前の店。
そう、それは彼女自身も知りたくてここへ来た。]
そうねぇ、これだけ情報を欲している人が集まっているんだもん。
焼き鳥かじりながら何か手がかりが掴めたら素敵!
たとえそれが、都市伝説でもいいじゃん! 何かが掴めたらさ!
なーんだ、スーツのおっさんも気が利いたこというじゃん!
さんせー!! てなことで、オヤジ! 酒!! もっきりで!
『本当にいるなら……』――
と考えてしまう時点で、
あなたも我々のお仲間のようですよ。
[端の欠けた猪口を軽く掲げて、探偵へ挨拶。
そしてふと、
深酒の女が口にしていた言葉に想起する夕刻。]
「常盤緑」の着物が似合う…
其の女性を探していたあのひとも。
どうなんだろう、
思い出が…ほしかったのかな。否、…
え? …なんでしょう。
[想いを馳せる間にさらわれた首肉の
対価らしき砂肝が取り皿へと置かれ。
指先と声につつかれ少女のおもてへ視線を戻す]
…そうですねえ…
一方的な取引は、好みませんので――
「家」を、一軒。
子供の頃に住んでいた古い家ですが、
――思い出の対価には思い出を、と。
[真顔で訊かれた分は、真顔で答える。
小石の詰まったアルパカ疑惑の貯金箱に触れて]
…
でも、困りました。
僕が用意したものは、プレーチェのこれほど
"せいいっぱい"ではないかもしれません。
ええ。こんな風に。
[くすりと笑って、コップに注いで貰う]
家を一軒。
[繰り返し。
目をぱちくりとさせて、青年を見る]
素敵ね。
価値の話じゃなくて、
あなたの覚悟が、素敵ね。
[アルパカ説が浮上した貯金箱を指で倒して]
そんなことない。と思う。
私に差し出せるものは、他にもあるかもしれない。
何を失っても良いか、もう少し考えてみるわ。
[そう言って、またテンマを見上げるようにして]
でも。ありがとう。
テンマ。あなた、ほんとうに紳士なのね。
[ぺと、と赤子みたくテンマの頬に触れる]
残念だわ。
[触れた指をすぐに離し]
私が売れるものなら、売ってあげたかったわ。
とても、残念ね。
[長い睫を震わせて、哀しげな声で]
無いことを証明するのは難しいからな。
――まあ、諦めたくないなら、諦めなくてもいいと思うけど。
[芸人>>34に軽く答える。
若い娘が他人の皿に手を伸ばしている姿が見えるが、そのときにはすでに目の前の皿は空になっているから気にすることもなく。
色が国ごとに違う、という翻訳家>>38の蘊蓄にはなるほど、とうなずいた]
その国独特の色ってことか。
[翻訳家>>41がここにいる理由もまた同じだと取れる返事に、彼女を見た後店内を見渡した]
……この場で情報が手に入るなら楽でいいけど、な。
[アルカパ疑惑の貯金箱の話や、背広姿の男と若い娘のやり取りにも耳を傾けはするものの、口を挟むことはなく。
ウーロン茶を飲み干した]
[コップの淵ぎりぎりまで注がれた安酒に嬉々としていると、
ふと聞こえた常盤緑を探している者の話。]
――…っ、 ――。
[一瞬だけ、背広の男へと振り向くも、
苦虫を噛み潰した表情で、目の前のアルコールを一気に仰ぐ。
呑み零した一滴が喉を伝う。まるで流せない涙のように。]
一生懸命と、家を一軒を対価にして。
欲しいものってものすごく大切なものなんだろうなー。
[悟られないようにお絞りで口許を丁寧に拭いながら、
どこか夢見心地で語散る態は酔っ払いの儘。]
ねね! その噂の真相をもし突き止めたら。
ひげのおっさんは、何か望むものってあるの?
[小さく繰り広げられている争奪戦を横目に、
聞きかじった情報を掘り下げるかのように、興味深く訊ねた。
問いは、眼鏡の男とジャンパーの男にも向けられて。]
思い出屋かー…。
でもその存在が実在したとして、本当に出遭えたなら。
一体あたしは…
[半分食いちぎられた肉が刺さる串を片手に、
ぼんやりと宙を覗く。
集まった者たちの、思い思いに集めた対価はみんな眩しい位大きすぎて。]
欲張りなのかなー…。
[独り言は租借するナンコツの噛み砕く音で消えていった**]
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