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………マールをしってるの?
[螺子が外れて壊れた時計。
重ねられる言葉が、何かの鍵のようにカチリと心に刻まれて。
『雪の精は、きっと......あのこをオーロラの国に、連れて行ったんだよ。
もう......苦しくないように』
無意識に少しずつ、呼び起こされる埋もれた記憶。
そう冬木にたずねたのは幼い過去の私。]
………
[元気そうだ、とは心の内の声。
独りではないのだから何とかなるだろう、とあちらは後回しにして。
微かに聞こえた、一度きりの声の方へと歩み進めた]
───……
[十字路まで来て三方向を見遣る。
さてどれが正解か。
大粒の雪が降りしきる中、人影が無いかと瞳を凝らした]
マール...あ...
[公園で一人で本を読んでいると、時々傍に寄ってきた子犬。
ある日、ちょっと年上の女の子が、その子犬を「マール」と呼んだ。
女の子と子犬は仲良しで...いいな、と思ったけれど、話しかける勇気はなくて]
[でも]
[微笑んだモミジの頭の重みが肩にかかる]
...七咲さ......
[その微笑みは、今まで彼女が見せていたどこか微妙な笑顔とは、なんだか少し違っているように見えた。
そう、ずっと前に、どこかで見たような]
[ズイハラの姿が見えない。
公園がどこだったかもよくわからなくなっていて、遭難という言葉が脳を過ぎる]
マシロさんのいとこさんー!
ズイハラさんー!
公園のお二人ー!
[いつの間にか、テレビの天気予報だったら雪だるまがゆらゆら揺れるマークが出そうな風が吹いている]
[彼女の身体が、地面にずり落ちぬように、肩に腕を回す。
とく、とく、と、聞こえる鼓動は自分のものか、彼女のものか]
あの子の名前......
[空を見上げる。
白い雪がふわふわと、舞う空を。
寒さは、今は感じない*]
……つか、だいぶ強くなって来たなあ。
[落ちてくる雪は大分大粒。
手袋はしているけれど、そろそろ感覚がなくなってきている]
……っても、アレの言う事、聞きたくねーし。
[ぽつ、と零れるのは小さな呟き。
半ば意地になっているのだが、その感情はあるものに向けているそれとよく似ていた]
…………俺は、俺のやりたいよーに、って。
決めたんだから。
[来た道を振り返る。
そしてそのまま男は首を傾いだ]
………
[声は何故か後ろから聞こえた、ように思う。
この辺りは多少入り組んでいるらしい]
…一本向こうか…?
[位置の大体の当たりをつけたものの、土地勘が無い場所。
辿り着けるかは甚だ疑問だったが、ひとまず歩くことにした]
[慣れない雪道に足を取られる。
朦朧としてきて歩くのも嫌になった。
人影らしきものが見えたのなら、へたりこんで*言うだろう*]
マシロさんも、目の前で消えちゃったんです。
もう、何したらいいのかわからない。
………
[楽しそうな声。
どうやら片岡は箔源のところに居るらしい。
妙にテンションが高く感じられるのは近縁だからなのだろうか]
…元気が無い、か。
[確か箔源は兎を追ったはず、と思考を巡らせる。
大方兎は逃げたのだろう。
そのせいとも考えられるのだが]
───……
[その程度で落ち込むような青年には見えず、疑問が残った]
…なまじはっきり聞こえるせいで位置が分からんな。
[距離を無視した声を頼りに出来そうにない。
ひとまずこれまで探していた声の主を探すことにした。
当たりをつけた場所を目指し歩いて行く]
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