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[忘れていた想い。
わすれていた、やくそく。
実家の、枯れかけた八重藤。
迷い込んだ藤の林。
――そして、目の前の咲けない、咲かない藤木…。]
あ、あのね。こんな場所だけどわたしね。
ともゆきくんに再会したら、言おうと思っていたことが、あるの。
[もし、これが運命のいたずらだったとしても。
藤の花の影響を受けて、逢えたのだったら。
藤の花言葉は、「恋に酔う」。
なら、酔った振りをしてでも。
わたし、言わなきゃいけない。]
[差し伸べた手に触れる六花の手>>57。
昔は同じだった目線もこちらが高くなり、手も友幸の方が遥かに大きい。
どこか気恥ずかしさを感じながら、10年の歳月をその身で実感していた]
……言おうと思ってたこと?
[今は何をしているのかなど聞きたいことは沢山あったが、それよりも先に六花が口を開く>>58。
植物を扱う仕事はしていたが、花言葉などは知る由も無く。
疑問を体現するように友幸は首を傾げた]
[久々に握るともゆきくんの手は大きくて。
でも、温かさは変わらない。
伸びた身長。
空を見上げるように。視線を上げたなら。
藤木の若葉の緑色が見えて。
あぁ、この方も頑張ったのなら。
わたしも、がんばらないとと。
近況より、なにより先に伝えたかった。]
あのね、わたし…ずっとずっと、
友幸さんのことが――
[だって、この場所を出てしまったら。
また会えないような気が、したから。]
…好き、なの。
[言おうと思っていたこと。
前に何かやっただろうか、なんて考えてしまうのは、失敗ばかりをしているが故。
だから、紡がれた言葉>>60を耳にした時、友幸の顔は呆気に取られていたはずだ]
────へっ?
[予想もしなかった言葉に間抜けな声が出る。
頭の中でぐるぐると言葉を咀嚼……する必要も無いシンプルな言葉は頭を巡った後にストンと落ちてきた]
…俺を? 六花が?
[一時の混乱。
友幸も昔から想いを寄せていたから、余計に信じられなくて。
理解が追いつくと瞬時に耳まで紅くなった。
繋ぐ手がなんだか熱い]
あ、ああ、あの、な、六花。
実は────ぅわっ!
[ドンッ、と背中を押される感覚。
吹き飛ぶ程では無かったが、より六花に近付く形になり、ぶつかって転ばないように相手を腕の中へと抱え胸へ引き寄せる形に。
押し潰さずに済んだことに安堵しつつちらと視線を後ろに向けると、妹が口に手を当てて笑っていた]
(杏奈のやつ……!)
[じと目を向けたのは一瞬。
意識は直ぐに六花へと向ける]
[六花は驚いていただろうか。
ハプニングに最初言おうとしていた言葉はなかなか出て来てくれず。
その、代わりに]
………先に言われちまったなぁ。
[腕を解くことはしないまま、紅い顔で恥ずかしそうに言った]
わたしが。その…友幸さんを…
す、き…
[とつぜんの告白。
驚かせてしまっても、無理はないと思う。
だって、わたしたちが最後に会ったのは、まだ小学生の頃。
そんな好きかどうかなんて。
…まだお菓子の好みのような捉え方の頃だから。
訊ね返されて。同じように返して。
ふたたび、口にする好きの文字は。
恥かしさに霞んでいくけれど――]
実は…な、に――っひゃっ?!
[友幸さんからの答えに。
いやな予感がよぎって。
そうだよね、うん。きっと好きな子、いるよね。
叶わない恋に泣かないように。堪えようとしたとき。
急にバランスを崩した友幸さんに引き寄せられ、胸へ顔を埋めてしまう。
耳許で鳴る、鼓動がはやい。
これは、わたしのはやさ?
……それとも、友幸さんのはやさ?]
あ、あのっ…ごめんなさい。おもわず顔を――…
[本当は、ずっとこうしていたいけれど。
好きじゃない子に抱きつかれているのは、きっといやだよね?
慌てて身を離そうとして、気付く。
回された腕が。ほどかれないことに。
見下ろす友幸さんの頬が、なぜか紅いことに。
そして――]
……えっ、先にって…なんの、こと?
[囁かれた言葉の真意に。
どうしても、あまい夢を見てしまいたくなるの。]
……だから、その
[問い返されて一度口篭る。
勢いで言いかけた言葉が今は恥ずかしいと言うのは何とも情けない話だ。
後ろに妹が居ると認識してしまったのが原因。
鼓動が早いのを感じながらも、少し頭を下げて六花の耳元に顔を寄せる。
六花を包む腕にほんの少し込められる、力]
────俺も、六花のことが好きだ、ってこと。
[いつか藤園の八重藤で再会出来たら、自分の想いが変わらなかったら言おうと思っていたこと。
その言葉を六花にだけ聞こえるように囁いた]
[言いよどまれて、ひととき。
大きな体に包まれているから、わたしは友幸さんしか見えなくて。
簡単には口に出来ない事情なんて知らなくて。
ただ、彼ばかりを見上げていた。
不安と期待の入りまじる視線で。
でも、それもすぐにおしまいが近づく。
身を屈めて耳許に寄せられた友幸さんの口から。
少しだけ引き寄せられるように抱きしめられた腕から。]
………ほんとう、に?
[伝えられた想いは、夢じゃなくて。
でも、夢かもしれないと思って。
頬をつねってみたら。]
夢じゃ…ないの?
[ちゃんと痛くて。
おどろいたまま、わたしは友幸さんを見つめて。
また、尋ねてしまっていて。]
「夢じゃ、ないよ」
[わたしの問い掛けに。代わりに答えたのは――]
え? ――…杏奈、ちゃん?
[どこか、聞き覚えのある声に。
友幸さんの横から顔を覗かせると。
おさない面影が残る、見知った顔がもう一つ。]
…こんなの、嘘で言えるわけ、無いだろ。
[頬を抓る様子>>68には微苦笑。
伝う温度も、抱き締め触れる腕も、夢だったら得られないもののはずなのに、まだ信じられないと言った様子の六花がおかしくて、可愛くて。
また問う様子>>70に口を開きかけたのだが]
…………杏奈お前、さっきはよくもっ。
[挟まれた声に思わず振り返る。
「えー、私はお手伝いしただけだよ」
白々しく言う妹にじと目を向けたが、妹は気にした風も無かった。
振り向くことで緩んだ腕に気付いてか偶然か、妹は友幸を押し退けて六花の前へ。
「六花さんお久しぶり!」]
どあっ。
……お前なぁ。
[手伝うのか邪魔したのかどっちだ、と妹へのじと目は継続された]
[六花と手を取り喜ぶ妹。
昔も懐いてたよな、と思い出せばじと目も多少は和らぐ]
[「六花さんの方が美人ですっ!」
「今何してるんですか?」
「私達今、○○に住んでてー」
聞きたかったことを妹が矢継ぎ早に聞いている。
自分で聞きたかったことでもあったが、仕方ないので妹に譲ることにした]
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