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─ 2014年 夏祭り ─
ああ、そういやあいつ、携帯持ってないんだっけ。
[おかげで連絡網とか面倒なんだよなあ、なんてちょっとだけ思いつつ]
ん、どうせぶらっと見て回る心算だったし、手伝うのは構わんぜー。
……両手に花は、ともかくとして。
[組み合わせ的にちょっとどうよ、なんて思ったのは口には出さず。
いいの、と聞かれると、ああ、と頷いた]
ブルーハワイも悪くないんだけど、あの色がなー。
ガキの頃は面白がってたけど。
[なんて軽く返しつつ、レモンをしゃくしゃく。
ひやり、冷たさが喉を落ちて行く感触が心地いい]
イチゴのシロップが化粧っぽい、って発想はなかったなあ……。
普段、そーういうのと縁遠そうだけど、自然に出てくる辺りはお前も女子なんだなあ。
[その冷たさを楽しみつつ、素で言った言葉が。
かなり酷い物言いなのには気づいていない、鈍感がひとり。*]
[カメラを提げた青年は、ぱたり、ぱたり、気怠げな歩みで熱気の中を進み、かき氷屋まで進んで]
……お?
[ふと見えた二つの人影、
ケンとマシロのそれに、立ち止まった。ややあってからにっと笑い、カメラを構えてファウンダーを覗き込んだ。 かしゃり。
ちょっとした隠し撮りに、気付かれたなら]
んー? やー、夏の熱愛発覚かと思ってんよ。
そんなんとは違ったけ?
なーん、いい記念になるやろいね。
[などと、軽口を叩いて笑っただろう]
― むかし ―
(ああそうか)
[ぷつり、と。
茎の折れる手応えを感じたのが、この世での最後の記憶。
なにかを悟る、とか、感慨にふけるとか]
(そう、走馬燈だ)
[何かを思い出す、なんてこともなく。
少しだけ気になると言った村の行く末どころか、ヤンキー座りするンガムラの姿さえ、見えず]
(これにて、おしまい――)
[物思う自我も、かき消えた*]
― あのよ ―
[ひら、]
[青い花びらが一枚。
下方へ落ちて、波紋を散らす]
[ぴちょん、]
[水滴が落ちるでもないのに、
いくらか先に、広がる波紋]
[ひとつ、もうひとつ]
赤ワインはインパクトが弱かったかな。
あーん。
美味しいんだけどなぁ。
星の砂さま、星の砂さま、どうか赤ワインの売り上げがぐぐっと伸びますように!!
あ、いらっしゃいませ。
[花が摘んだ人間の願いを叶えるならば、代価(花)もそれと同じだけの力がある……と願ってもそうははいかなかったことも、それが、自分自身の記憶を削るものであることも、それ故に、忘れてしまった。
ただ、送ることだけ、贈ることだけ、憶えている]
……。
[足音は、ないまま]
あ。
[さまよい歩いた足は、漸く止まる]
[道の上に立ち、参り道を逆に辿る]
…………
[一度歌姫を振り返った後、胸に青い花を抱いたままゆっくりと歩を進めた。
歩むにつれて近付くひかり。
胸に抱いた青い花は解けて、靄となり宙へと解け行く。
異質な場所にありながら消えることのなかった記憶。
ここまで来れば守るものが無くとも忘れはしない]
[先に戻ったケンに遅れて、モミジもまた時の進んだ世界へと舞い戻った*]
…そろそろ行くとするよ。
すぐ戻るって皆に言って来ているから、あんまり遅いと不安にさせてしまいそうだし。
シンヤ君、色々ありがとう。
それじゃ僕はこれ──…
この、音…?
…すまない、シンヤ君。
少し付き合ってくれるだろうか。
僕の勘違いでなければ、もしかしたら…いや、行けば解る。
一緒に行こう、迎えに行くんだ。
[青い花を携えたひとがいる。
見ている先は、青い星を敷き詰めた道の方だろうか。
ふ、と笑えば。
揺らいでいた存在が先ほどまでいた世界と同じように模った]
……かえりみち、どっちだっけ。
[そのひとにかける声音は、そっと*]
音が聞こえたのはこっちだったよね?
あぁもう、暗いと走り辛くていけないな。
早く…、あっと、ここ木の根が出てるから気をつけて。
───…あぁ。
やっぱり、勘違いじゃなかった。
アン、ケン君。
みんな、お帰り。
帰ってくるのを、待っていたよ。*
記念は、記念やろ。
……折角の夏祭りやさけ。
皆の姿が撮れたら、
後から見ても、こう……
いいと思わんけ?
[ケンに、口数は多くも悩み混じりに言っては、笑い]
学級新聞のネタにも最適やじ?
なんて、うち学級新聞ないけどー。
[照れ隠しに、そんな冗談を付け足した]
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