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さーて、んじゃ仕上げるぞー。
反対側、確り持てよー?
[話題切り替え、頭を乗せるべく声をかける。
今はとりあえず、やりかけている事を。
ちゃんと仕上げたい、という気持ちが強かった。**]
[そうして、暫くして。
届いた随原の声に、視線を送る。
咄嗟に感謝を伝える冬木とは違って、私が口を開いた時にはもう。
彼の姿はなくて。]
……うん。
[帰ろうという冬木に頷く。
でも、やっぱり少し、怖くて。
世界が変わるその瞬間、無意識に。
重ねた手に力を込めてしまったこと、冬木は気付いただろうか。]
-病院-
[戻った場所は、最初に居た通りではなく、人気の無いバス停のベンチ。
冬木の付き添いの元、タクシーで病院に向かった。
診察後、医師より念の為今夜一晩、入院することを勧められる。
その間の、看護師さんと冬木やりとりは知らず、心配気にこちらを見つめる彼に、大丈夫、と笑って、その日は別れて。
でも、きっと、あの時。
私が無理して笑っていたから。]
─────…走って来たの?
[朝一番、こんなに息を切らせて、会いにきてくれたのだと思う。]
…おはよう。
[零れるように笑いかける。
窓から差しこむ朝日。
小鳥の鳴き声。
目に映る何もかもが、綺麗で、優しかった。**]
-昨夜-
……あの時みたい。
[窓に映る自分を見て、呟いた。
淡い桜色の寝衣。
雪にすっかり濡れてしまった洋服はクリーニングに出している。
病院の消灯時間は早い。
眠って、起きたら朝だったら良かったのだけれど。
点滴と薬が効いたのだろう。]
───…
[夜の街。
深夜だというのに、ちらほら灯りが見える。
ガラスの向こうの音は何も、聞こえない。]
…うそつき…
[大丈夫だなんて、相変わらずお姉さん気取り。
子供の頃と何にも変わってなくて、呆れてしまう。]
[ずっと、平気だったのに。
別れて未だ、数時間しか経って居ないのに。
考えなきゃいけないことは他にも沢山、あるのに。]
……逢いたい…
[抑えられない感情が雫になる。
仕舞っていた色んなことが、堰を切ったように思い出されて、声を押し殺して泣いて。
気が弱くなってるにも程がある。]
[でも。だから。
凄く、嬉しかったの。
肩で息をしながらも、おはようって。
名前を詠んで。
笑いかけてくれた。
そのことが、とても。**]
あー。
なんかすごかったらしーね?
[家を出た時の話は全てではないけれども聞いていた]
今度の集まりな、今んとこみんな来れそうっつってるらしーんだよ。
だから兄やんも来たらカンペキなんだけどなー。
……よし、いいよー。せーのっ、
[雪玉の下へ両手を入れて、力を籠める。
特に何も考えずに転がしてきた雪玉は、胴体よりぎりぎりちょっと小さいくらいの大きさになっていた]
……ぅぐ、もーちょ、い…!
[少しよろけつつ、頭の部分を一生懸命持ち上げる]
[凄かった、という言葉に滲むのは苦笑。
うっかり互いに本気になった挙げ句、二人揃って母に廊下で正座されられた、というオチまではどうやら伝わっていないらしい]
あー……そっか。
久々に全員揃えそうなのかぁ……。
[大分会っていないいとこも多い。
もし会えるなら……と。
そんな事を思いながら持ち上げる手に力を入れて]
……っせい、っとお……!
[気合と共に、頭を持ち上げる。
ちょっとずれそうになったが、強引に真ん中に寄せて落ちつけた]
……おま、バランス考えろよ、って、昔から言ってんだろーが。
[なんとか固定した所で、突っ込み一つ飛ばして、それから。
淡い陽射しと空色を覗かせる空を見上げて]
……さて、と。
他はみんな帰ったっぽいし。
俺らも帰るかあ。
[雪玉ころころしている間に、冬木たちの姿も見えなくなっていたから。
ごく軽い口調で、そう言った]
退院の手続きは回診の後だって。俺が家まで送るから、安心して。
[自由業はこういう時便利なんだ、と笑う]
それと……これ。
[抱えていた茶封筒を、差し出す]
昨夜、書き上がったんだ、ずっと筆が止まってた小説。
徹夜で一気に書いたから、誤字とかあるかもしれないけど。
[少し紅い顔で、そんな風に説明を加える]
モミジさんに、最初に読んで欲しい。
[貴女の事を思いながら書いた、貴女が居たから完成出来た物語だから……そう言って、照れくさそうに笑った]
[壊れた筈のノートパソコンは、何故か持って帰ると何事もなかったかのように起動した。
確かに外装の一部は砕けているのに、中身はデータも全て無事で。
でもなんだか、そんな不思議も当たり前のように思えた。
最初の小説を、一部の評論家に「甘いだけで個性も現実味も無い」と批評されて、それが引っかかって書き上がらずにいた続編が、今なら書ける、と何故か確信できて]
[それは、最初の物語の主人公だった騎士と姫君の子供達の話。
いくつもの冒険を乗り越えて、仲間を作り、新しい世界を見て、やがて大切な幼馴染みと幸せに結ばれる…そんな、おとぎばなし]
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