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[マティアスの視線の先は、自分の居場所とは違っていたが……そんなことは関係がない]
[彼はマティアスの手を取り、その掌にゆっくりと文字を書いた]
『もい マティ』
『まってろ ひとを よんでくる』
[そう告げ、彼は一度居間に戻った。動けない成人男性を抱え上げられる程の力はない]**
[おきあがる、すぐそばに人の気配を感じ]
くれす、と?
[手に感じる、ゆっくりとした筆跡。
誰かなんて、すぐにわかる]
あり、がとう。
[――見えない彼の背に向けるのは、数日ぶりに浮かべる安堵の表情だった。
何もかも変わってしまったと思ったのに、変わらないものもあったことを]
[しかしそれもすぐに曇る。このことが、クレストにとって悪いことにならなければいい]
ごめん、おれは、もう……
[だめだ。その言葉は*飲み込んだ*]
[クレストがなんどか居間を出入りしているのも見ている。
玄関ホールにいたマティアスのことは、朝は気づかなかったから。
何をしているのだろうかと、次にやってきた時には視線を向けていた]
そうさね……
人とともに居ても。
目覚めてしまえば食らいたくなるのだから。
そういうことかも、しれないねえ……
[年老いたコエが、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
大切なものは、血肉になった。
ずっと、この身とともにある。
けれど、それを目覚めたばかりの若い狼に理解しろとは、言わないまま]
なぁに、手を掛けたくないのなら。
わしが、しよう。
[そう、ささやいた]
クレストまで…いるの。
[挙がる名>>95の中に、いまだ顔合わせていない男の名を聞く。
その名前に、また女の表情は翳った]
そうもって…、まだ何も起きていないもの。
だって、起きてしまったらどうしたらいいの。
私たち、疑いあう、の…?
[死を連想させる言葉は紡げなくて、曖昧な言葉を口にした。
助けを求めるようにニルスを見てしまってから、
またすぐに目を伏せる。
イェンニのいる場で、これ以上は口にする気になれなかった]
ええ。出来ることなら。
[それでもヴァルテリの声>>101には少し表情を和らげる。
こくりと頷いてから、席を立った。
ユノラフの傍へと歩き、声を掛ける]
あの…。…昨日はありがとう。
あとで上に用があるの。
手伝って、くださらない?
[緊張した面持ちで彼への頼みを口にした]
[やがてクレストが現れれば、自然とそちらに顔は向く。
本当に顔を見てしまえば、ごく小さな息が零れた]
…どうして…。
[零れ落ちるのは、問う相手のない*問い*]
[ニルスの考えを静かに聞き]
まあ、考えることはいくらでもできるだろうさ。
……何事も、おこらないのが一番だろうがねぇ。
[ゆっくりと呟き。
ウルスラの表情が和らいだのを見て、ゆるりと笑んだ。
またやってきたクレストが黒板に文字を書いたとしても、ここからは見えず。
簡単な単語ならば読めるが、早いやりとりには不向きなため、クレストとのやりとりは黒板よりもボディーランゲージのほうがおおい。
日が昇ってから大分時間がたった。
揺り椅子にはやしていた根っこを引っこ抜くように、ゆっくりと立ち上がり]
――ま、なんか食べれば、気分もましになるだろうて。
[煮込みぐらいならまだまだ作れる。
すでに昼近い空を見上げて、ゆっくりと台所に向かった]
[誰かが手伝ってくれるのなら、それを断る事はなく。
台所で、簡単なオニオンスープと、パン、ハムといったものを用意するつもりで。
手伝ってくれる人がほかにも何か作るのなら、それも。
遊牧の合間、食事の支度は女の仕事とはいえ、できることはある程度こなすものだった。
村に一人で行商に向かうこともあるのだからできなければ、旅の間簡易食料だけとか悲惨な食事になる。
居間で交わされていたあれこれを思い返しながら、至極ゆっくりとした動作で食事をつくっていた]
えっと……
うえ、 お……
[じゅうたんから這い出そうとして、毛布とぐっちゃぐっちゃになって、よくわからず途方にくれている男。
子猫が毛糸で絡まるのとは、残念ながらスケールがいささか違いすぎた]
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