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ん、ちょっとあってさ、真白と連絡とる機会あって。
んで、聞いた。
……全員揃うって時に、俺がいかない訳にはいかねーじゃん。
[なんて、冗談めかして笑って、それから]
んで、さ。
その後、もっかい、話聞いてほしいんだ。
俺がやりたい事の話、もーいっかい。
[それでも納得してもらえないなら、本気の縁切りも覚悟の上で告げた言葉に。
母はあっさり、わかったわ、と返してきて。
その後はまあ、近況について色々根掘り葉掘りされて。
同居人不在でよかった、と二度思う事になったのはまた、余談。*]
[出したメールに返った返信は、ひとつ。
後の二つは、届く先がなくなっていた。
そして返って来たひとつには]
……まっさか、だったよなぁ。
[一番最初に、受験だからと離れて行ったベース弾き。
彼からの返信には、色々あって、また音楽を始めようとして、でも行き詰っているのだという愚痴が綴られていた。
だったら、とまた一緒にやるか、と水を向けた。
まあ、こっちも停滞中だけど、という但し書きもついてはいたけれど]
[そんなメールを返した後、唐突に同居人に泣きつかれた。
この所、バンド内の擦れ違いが酷い、と相談は受けていたけれど。
どうやらそれは、解散という形に落ちついてしまったようで]
……んで、どーするんよ?
『どーするもこーするも。
ドラムとキーボードだけじゃ……』
[言いかけられた言葉はぴたりと止まり。
じい、とお互いを見るだけの空白が生じた]
『……なー。
バっくんはさぁ……』
[言いかけた言葉を遮ったのは、メールの着信。
ちょい待ち、と手で制しつつ開いたそれに綴られていたのは──]
[そんなこんなで、昔の仲間と、最近の知り合いと。
一緒に動き出せそうな取っ掛かりを掴んで、色々と動き出したある日。
いつものように、駅前で路上演奏に勤しんでいた]
曇り空の下彷徨い歩いて
いつも 空回りして
愛想笑いだけ巧くなっていく
自分に呆れてた
ひらり 雪の落ちる街
つめたく冷えていく
だけど諦めないなら
この 熱は消えない
[歌うのは、雪色の街から帰って来た後に書き上げた歌]
ふわり 雪の舞い落ちてくこの街
一人彷徨い歩く
今は迷うだけでもそう いつかは
たどり着いてみせるさ
そう どんなに険しい道でも
立ち止まりはしない
前に進むだけしかできない
それが自分だからさ
[歌うだけ歌い切って。
いつもより多い拍手に面食らっていたら、その主は]
……つか、冬木さん、持ち上げすぎっす。
[いつか、あの街で出会ったひとの一人。
思わず突っ込み飛ばした後の頼まれ事に、きょとん、と瞬いた]
……あー……時間、取れそうならいいですけど。
んでも、俺ので構わないんですかー?
[こてり、と首を傾げて問う。
本とはあんまり縁がない自分ではあったけれど。
偶然、同居人の本棚に冬木の作品を見つけて。
借りて読んだ後、自分でも買った、というのは幾つ目かの余談]
あ、そーだ。
今度、ライブやるんですよ。
よかったら、聴きに来てくださいねー。
勿論、七咲さんも一緒に。
[にぱ、と笑って宣伝一つ。
もし冬木が来たら、同居人は違う意味で舞い上がるだろうなー、なんて。
ちょっと思いながらの笑みは、悪戯っ子のそれだった。*]
…そろそろ、かな。
[部屋にスズランを飾りながら、小さく微笑む。
あれ以来、冬木は殆ど毎日と言ってもいいくらいの頻度で、顔を見せに来てくれている。
もうすっかり風邪も治って元気になったのに、休んでてって、作ってくれるご飯はどれも、とても美味しくて。
改めて、部屋を見回す。
新築ではない1DKのアパート。
一般的な女性の部屋と比べると、かなり質素で、だから散らかっていた訳ではないけれど、今にして思えばやっぱり、綺麗に掃除した状態の部屋を見て欲しかったなって思う。]
[病室で彼から渡された物語のヒロインと現実は全然違う。
モデルは私だと言われて、確かに所々、設定とか特徴は似ていると思ったけれど、正直かなり美化されているように思った。
でも、「美化し過ぎだよ。」って笑ったら、真剣に否定されて。
自分が主人公なことは、柄じゃないなんて言う癖に。
紅い顔で、そんな風に言われて、どう対応していいかわからなくなって、あの時はお互い黙り込んでしまって。]
もう、いい大人なのに。
[思い出して、また笑う。
彼の目を通した見た私は、私が考えていた私と全然違うのかもしれない。
同じように、私が見た彼も。
そして、それは悪い事じゃなくて。
少しずつこうやって、お互いを知っていって。
いつか本当にあの物語のように───。]
[インターホンがなる。
スリッパを鳴らして駆けて、ガチャリとドアを開ける。
立って居る彼を見上げて、いつものように。
私はふわりと笑いかけた。]
*いらっしゃい。*
-後日:喫茶店-
……管理本部、ですか?
[営業担当に問う。
契約終了の予定で進んでいた仕事に、ストップが掛かったと言う。
聞けば、現部署である財務経理部のひとつ上の部署が、引き抜きたいと申し出ているらしい。
どうですか、と意思を確認されるのは、担当が現部署であったことを知っているから。
今回の契約終了は表向きは業務減少による人手過多であったが、本当は私が上司の不興を買ったことにある。
具体的には、たび重なる食事の誘いを断り続けた結果。
そして、こういう会社は法律がどうであれ、未だに多い。]
…少し、考えさせて下さい。
[応えて、席を立つ。
次が決まっていないのだから、首を縦に振って、続ければいいとは思う。
ビジネスライクに。
けれど、このまま、気持ちの無いままでは駄目な気がして。
どこかに、本当に必要として信頼してくれる、信頼出来る、そんな場所があるような気がして。
そんな"甘い"考え、ずっと、しないよう生きてきたけれど。]
……ええ、今、流れてる曲。
綺麗だなって。
[買った花を受け取りながら、駅を見遣る。
通りかかった宝くじ売り場は行列だった。**」
[そんな風に話して連絡先も交換した後ライブに誘われた]
へえ、ライブか。うん、是非行かせてもらう。
モミジさんも一緒に行くよね?
[にこりと、隣のモミジに笑いかける]
楽しみにしてるよ。
[きっとリア充全開だなあ、と思われただろうが、現状気にする訳がなかった*]
よしゃ、んじゃ、ますます気合入れてやんないとなっ!
[あの街で関わりを持った人に聴いてもらえるのは、家族や親戚に聴いてもらえるのとはまた違った嬉しさがある。
だから、それはそれでいい……のだが]
(……つか、すっかりリア充だよなあ)
[傍らの紅葉に話しかける様子に、つい、こんな思考が過ったのは赦されろ。
なんて過るのは止められなかった。**]
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