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そう?
「おいギンスイ、店さぼってデートかあ?」
[大丈夫という少女の様子を見ていると、背後から知り合いのからかい声が聞こえた。
誰がだ、と文句を言うため振り返ろうとしたが。突然に視界がぼやけて、クラリとする]
……とゆーか、そもそも、ここ、どこ。
[最大の問題は、そこだった。
さっきまでいた植物園でない。
ぐるり見回しても、目に入るのは甘く匂って揺れる藤の花だけで]
……裏山に似てるけど……違うよ、なぁ。
[その光景は、ふと思い出した子供の頃の遊び場にそっくりで、でも、違っても見えて]
……誰か、いる、かな。
[小さく呟き、カメラバッグを肩にかけ直して]
だーれか、いますかー?
[とりあえず、宛もなく声を上げてみた]
藤の花、なぁ…。
俺もさっきそんなの見たような…。
[妹の話を整理させて、何が起きたかを知る。
似たような体験をしたことを思い出して口にした時、ある音が聞こえた]
……鐘?
[スマホを耳に当てたまま周囲を見回す。
この植物園に鐘が鳴り響く時計なんてものは無い。
更に不思議なことに、父は何も気にしていないような雰囲気で作業を続けていた]
おや───
[父を呼ぼうとして、耳に届く妹の声。
「えっ、なに……鐘?」]
杏奈、お前にも聞こえるのか?
[問いかけを口にしたのが、鐘が13回鳴り響いた時のこと]
……へ?
[気付けば満開の藤林の中。
紫色の中にあるのは兎の姿>>#2。
それも、直立二足歩行の]
時計の『鍵』と『螺子』?
いや、知らないが。
待て待て、空間が崩れるって何だ。
と言うかここはどこだ!
[一方的に話を続ける兎を余所に、友幸を辺りを見回した。
見事に咲く藤の花はあの藤園のようだけど、何かが違うように思う]
……『木の想いの時計』?
いやだから探せって、何で俺が。
あああ、巻き込まれたくないならってことか?
訳分からんところに連れて来てなんだそれ!
[持ったままのスマホから妹の声>>0が届く]
杏奈?
もしかしてお前、藤林に居るのか?
[そう問うたのは、声が自分と同じような心境のように聞こえたため。
是の答えが返り、頭を抱えている間に二足歩行の兎はどこかへと消えていた]
あ、いけない、汚れちゃう。
[慌てて屈んでしまったから 裾に土が パタパタ]
これくらいなら、大丈夫、かな?
[モブだから どうせ 使い古しの衣装だ、し?]
[二足歩行の兎が、延々とまくしたてることばを、呆然と聞く]
[鍵とか螺子とか、時計とか、ほんとーに意味が解らない]
[でも、一番意味が解らないのは]
[何度か瞬きをした時、すぐ横から聞こえた声。
何処かで見覚えのある、白いふわふわもこもこの足と、2本の耳…。]
……。
[もしも、傍に居たならば、先程まで一緒だった彼に「アレは何でしょう?」と指さしただろう。]
[耳に残っている鐘の音。
傾ぐ身体を支えようと筐体に伸ばしたはずの手は金属の冷たさではなく、木の温もりを伝えてきた]
あ…
[突いた掌の先に視線を向けて色の続く先を辿っていくと、そこには]
…なんで?
[咲き誇る藤を見上げて呆然とした。
一緒にいた少女はどうなったのか、確認することもすぐには思いつけないくらい。
二足歩行の兎の話は、聞こうとしなくても耳に届いてくるものかもしれないけれど**]
どーして、私が!?
[やっと声が出た時には もう 誰もいない]
...熱射病にやられて、幻覚ていうか...あ、もしかして倒れて、夢見てる、とか。
[夢にしては いろいろおかしい 知ってるけど]
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