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[どうしたのかと、美夏ちゃんは聞いたろうか。俺は、なんでもないと答えるだろう。それでも、ここはおかしいと思ったから。オムライスを食べ終わったなら、勘定を少し多目にテーブルに置いて]
すいません、勘定ここに置きます。
美夏ちゃん、出よう。なんか変だ。
[そう言って、彼女を連れ出した。街を見た。車の一台も通らない。コンビニを覗いた。店員すらも見当たらない。おかしい、おかしい、おかしい。]
美夏ちゃん、おかしいよ。人がいないんだ。
一回、家に帰ってみて?親とかいるか、確認してよ。
なんかあったら、すぐメールして。
俺、ぶっ飛んで行くから。
[美夏ちゃんと別れて、俺は走っていた。あり得ないんだ。言い様のない胸騒ぎがするんだ。]
―自宅―
おとん!いるか!?
[ばんっとドアを開けた。しんと静まり返った家の中。どこを探しても、父親の姿はなかった。母親はいない。外に男を作って、俺が中学の頃出ていった。今日はたまたま帰らなかっただけなのか?それとも………]
……………
[俺は、しばらく美夏ちゃんからのメールを待っていた*]
―自宅―
うぇー腹減った。
[昨日こっぴどく怒られたのは、なんだったのか
それくらいのケロッとした顏で目を覚ます]
あっれぇ
かーちゃんいねーのか
[広くない団地の一室だから、
見て回るのにさして時間は要らない。
台所と寝室、風呂と洗面所、それに手洗い。
探す温もりはそこにはなくて]
まだ帰ってねーとか?
[首を捻る。店の客がどんなに管を巻いても、
朝には必ず帰ってきていたのに]
─駅─
[いつもなら通勤ラッシュでごった返すはずの構内は、がらんと静まり返っていて。]
…何だ、これ。
[今日は祝日だったろうか?そんなことは無いはずなのに。
定期を使って自動改札を抜ける。
人気の無いホームは、長く長く広い。]
『―ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ―』
[食卓の上で携帯が振動する音。
携帯は母親の物で、アラームが鳴っていただけだった]
かーちゃん、一回帰ってきたんだ。
[店がらみの電話がかかってくるから、
携帯はいつも肌身離さずだったはず]
かーちゃん…?
[ふと気付く孤独。寂しさ。
ベランダから外に出れば雪が降っていた]
雪だ!!
さみーっ!!
[一瞬ぱあっと嬉しそうに目を輝かせるが
ブルブルと身を震わせて急いで部屋に*引っ込んだ*]
…何を、言って……?
[少女の言葉に首をかしげる。
電車の気配のしない駅。
耳鳴りを伴う、頭痛。
遠く、雑踏のざわめきが聞こえた気がした。]
/*
霊、だ!
せっかくだから墓下がどう見えるのか見てみたいですが。
ほとんど絡めてないし、寡黙吊りされそうだからなあ
うむむ。
しかし人狼一人とは、下手したら一日目で終わる、てこと?
こえーっっ!
やっぱり、なんかあるんだ………
親父、生きてんのかなぁ………
美夏ちゃん、大丈夫かなぁ………
[頭に響く、不思議な声。それはきっと、あの人の]
………ズイハラさん………
[気がついたら、眠っていたらしい。着信メールを確認していると、俺はおかしなメールを見つけた。]
11/1 MON
差出人 アン
件名 わかるでしょ?
内容
もういないのよ。
誰も、いないのよ。
[意味がわからなくて、俺は外に出た。やはりそこには誰もいなくて。孤独、その為だけにあるような世界。そこに、俺は言い様のない不安と、小さな安心を感じていた。]
「誰もいないのよ。」
[不意に聞こえた声に振り返れば、そこには昨日の少女………アンが立っていて。美しいはずの黒髪は、何故かとても恐ろしくて。見慣れたはずの制服が、何故かとても異様に見えて。]
アン………お前、なんでここに………
[俺の質問には答えず、彼女はこの世界の事を語る。消えた人々、死者の思い、帰る方法。そして、自分はこの世界に長くいられないという事。一方的に俺にそれを伝えると、黒髪の少女はくるりと背を向けた。]
「サヨナラ、ジュンタ」
[何度も聞いたサヨナラは、何故か心に刺さった。]
待て、アン!もう少し話を!
[彼女は表情すら変えず、消え入るように去っていった。]
[日はまだ高い。俺は学校に行っていた。下駄箱に収まった上靴達に温もりはなく。職員室にも人影はない。いつも、休みだと言うのに青春してる野球部の叫びも。体育館からいつも聞こえるはずのバスケ部の声も。テニスコートで和気藹々としていたテニス部の黄色い声援も。そこにはない。]
なんなんだよ………なんなんだよここは!
[久しぶりに着た制服は、誰に見られるわけでもなく。珍しく履いた上靴は、誰もいない廊下に足音を響かせるだけで。]
「まだ信じられないの?」
[何処からか聞こえたその声に、俺は振り返る。すぐ横にあった理科室の中で、たたずむ一人の女生徒がいた。長い黒髪のその人は、何故かとても異様な雰囲気がした。]
「私のいう事、まだ信じられないの?ジュンタ。」
[雪は、ちらちらと降り積もる。冬に広がるその空は、灰色の雲に覆われていた。葉を失った木々が寒そうに、その枝を擦り会わせる音がした。]
アン………なんでお前はここにいる………?
―駅前のコンビニ―
[無機質に開くドア。
誰もいない店内。
賞味期限の切れたおにぎりが並ぶ。
店内に流れるノイズはその異常さを増長させた。]
……夢でも見てるのかしら。
[起きたその自宅に両親の姿はなかった。
ここに来る道のり、途中に誰とも会うことはなかった。
電車の通過する音も聞いていない。
おそらく電車が動いていないのであろう。]
塾サボれるなら、それでもいいのだけれど。
[誰もいないコンビニを出ようと振り返る。]
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