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[最後にやってきたゾウサクに挨拶をして]
まさか道端で全員集合するとは思いませんでしたけどね。
[以前とは違いひとり足りないことをにおわせる]
「モミジちゃん!」
[あの日からまた数日後。
引き寄せられるようにして足を踏み入れた横丁のお社の前で]
あれ? ゼンジさん? こんにちは。
[彼女は再び奇妙な出遭いをする]
[交わした言葉は他愛のないものが大半だっただろうか。
それでも彼女は、ふとひとつの疑問にかち当たる]
ねぇ、ゼンジさん。
思い出屋さんってどこで思い出を仕入れているのかしら?
それと…
[その後古き知り合いと分かれた彼女は]
あ、焼き鳥屋のおじさんこんにちは。
え? 新しい噂?
お饅頭屋さんのこし餡が?
でもそれは…
はい? Tシャツに蛙って…
それはある意味思い出屋のお仕事っぽい感じが、しないこともないわよね…。
[新たな噂話を耳にする。
こし餡を抱えた夕日色のジャンパーらしき男。
そして懐かしいアニメのような悲劇に遭った、マフラー男らしき姿。
それはある意味思い出屋の仕業にも思えた。
懐かしい、という意味で**]
[浮かんだ思いは口に出されたのかどうか。]
[しばし後に面々と別れて歩き出し]
ぶわっ、
ちょ、なんだこりゃ?
[一瞬吹き付けた風に運ばれてきた紙切れに、顔面を直撃されてしまった。]
──んー?こいつは……。
[見ると、明らかに子供が書いた字に、赤ペンでいくつもの丸がつけられていて、]
「小父さんごめんなさーい」
[向こう側から、子供の謝る声がする。]
ああ、せっかく満点とったテストじゃないか。大事にランドセルに入れとかなきゃだめだろう。
[頭を下げてから走り寄ってくる男の子に自分も向かっていき、]
お母さんにちゃんと見せるんだぜ。
[改めて、ごめんなさいをいう子供に、ニヤリと笑って、「100点」と書かれたテスト用紙を手渡した。]
[礼を言って、走り去る少年を見送ると、再び歩き出す。]
100点満点か。俺は殆ど縁がなかったよなぁ。
いっぺんとった時は──
[一人ごちながらの足どりが、不意にゆっくりしたものになった。]
…。
……。
…………。
お前さんの見立ては正しかったねぇ、テンマさんよ。
[空き家探検がばれて、閉め出しを食らった日の遅い夕食。何故かいつになくごちそうが並んでいた。
悪童で、成績もあまり芳しくなかった自分が、偶に学校で誉められたりした時に並んでいたような品々。]
鼠小僧参上!って壁に書いていったようなものだったんだなあ、あの時は。
寄り道しないで真っ直ぐ帰りゃあよかったんだろうが……
[三度動き出した足は、雑貨屋を経て、和菓子屋に向かう。]
すまんが、これ一杯分の漉し餡を分けてもらえるかい?
[店の主に差し出したのは、雑貨屋で買い求めた、かなり大きめなタッパー。]
……。ああ、そうだな。成人病防止に、こいつを食べきるまでは、毎日ジョギングでもしようかね。
[あれからまた数日がたち。
山場を越えて疲れた編集者がゆっくりと路地を行く。
結局どちらともつかずふらふらといったりきたりしている男は、芸人や探偵の噂を耳にして首をかしげた]
……漉し餡にカエル?
[首をかしげて呟き]
思い出屋にあえたんだろうか。
[仕事で向かったテレビ局で見かけた芸人は、路地で見るときとは違った顔を見せているから、よくわからなかった。
だが、今日此処で会わないのなら、きっと会えたのだろうと、そう思った]
[病院のベッドに横たわる相棒。
枕元にはよくドラマで見る心電図が
ピーッ、ピーッと長い間を取って
音を鳴らしている。
レンがそこに駆け込んでくると、
それまで閉じていた病人の目が薄く開いた。
そこで、レンに向かって囁くような声で]
……大丈夫、だったか?
こんにちは。
それともこんばんは、かしら?
[社から出て横丁の路地。
ひとり路地で子どもらしい遊びをしているプレーチェへ声をかけた。]
思い出は、買えた?
それとも――売れた、かしら?
ああ、もうバッチリだったよ!
そんなことより、まずお前が病気直さないと
何にもならないだろうが!
[自分の命よりも番組オーディションの方が
大事だと言わんばかりの態度でいる相棒に
怒鳴りつける。
落ち付いてください、という
医者の注意で我に返って]
[怒鳴りつけられても
相棒は意に介することなく。
いや――既に喋る気力すらない状態だった。
会話ができるのも奇跡的と言えるような]
……よかった。
もう少しだけ待ってくれたら俺も……
いくから。
せっかく、だから……
やろうぜ、新ネタ。
……あのかえるのTシャツ、
捨ててないよな?
[力なく微笑んだ次の瞬間。
心電図の音が変化する。
かける言葉が見つからないレンに
相棒は続けて話す]
……ありがとう。
お前のような相方がいて、俺は、
幸せ『だった』よ。
[それだけ言って目を伏せる。
最後だった。
心電図は一定の音を立てたまま。
体のどこもピクリとも動かず。
そのうち温もりも消えてしまうだろう]
……なんなんだよ。
そっちから誘っておいて。
ネタもろくに書けない癖に。
ひとりじゃ何もできない癖に。
ひとりで勝手に行くんじゃねえよ!!
[罵ろうと怒鳴ろうと、行った彼は戻らない]
[そこで目が覚めた。
何年前のことだったろうかは思い出せないが
確かにそれは――]
これが……?
俺の探してた「思い出」?
[それを受け入れてる自分が不思議だった。
対価の有無を確認するより先に
まずマネージャーに電話をかけた]
[電話に出た女性マネージャーは
コンビ時代からの付き合いだ。
聞けば教えてくれるはずで。
電話に出たマネージャーはいつもの調子で]
「おはよう。
って今日は確か完全オフでしょ?何?」
[一呼吸置いて、昔の相棒の話を切り出す]
……生きてないんだよね?
[マネージャーはその言葉を聞いて
ふ、と息をつく]
「……ようやく受け入れてくれるんだ。
そう、病気でね。
アンタがずっと『あいつはお笑いやめて
実家に帰ったんだ』って真面目な顔して
言ってるのが痛々しくてさ……
あたしは何も言えなかった」
「あたしだって信じたくなかったけど……
現実は変えようがないしね。
せめて墓参りぐらいはしてやんなよ。
寂しがってるよ、きっと。
好物のチロルチョコぐらい持ってさ」
[マネージャーの語る話を
レンは時折相槌を入れながら聞いていた]
……分かった。ありがとう。
「明日からはちゃんとしてよ。
間違っても泣きはらした顔で来ないように!
それじゃね」
[マネージャーはきっちり釘をさして
電話を切った。
そして彼は、まず横丁へと向かう]
[モミジに声をかけられて、
立ち上がって、彼女を見た]
心は、決まった?
[モミジの問いには答えず、グリタに目線を移し二人ともに、そんなことを言う]
―― 廃屋の映画館 ――
[――破れた銀幕に映る心電図が、
水平のラインを引き続けている。
背後でカラカラと回る映写機の音。
老婆を載せた車椅子のハンドルに
手を添えて、背広姿が佇んでいる。
無声にて流される映像は、病室の一幕。]
[駄菓子屋にあるチロルチョコは
コンビニと比べれば種類も少なくて
ふーむと唸る]
あいつがよく食べてたのなんだっけ……。
違うパッケージのしかないな。
[逝った片割れの台詞は、無音に聴く。
"幸せ『だった』よ。"
残される相手の背を前に押す、
想いが生んだそれは優しい呪言。]
意を汲む――
なかなか、為せることではありません。
真に思い出そうとしても
忘れられなかったのなら、
…きっと、
相棒と呼べる存在だったのでしょうね…
[やがてフィルムが途切れれば、
廃屋の映画館には暗闇が*訪れる*。]
全部消化したのであとはフリーダムにやるぞー
1.4.ミルク
2.5.ビス
3.6.アーモンド
コーヒーヌガー以外で古目のレギュラーが
これしか思い浮かばなかった{2}
ああ、そうだあれだよ!ミルク!
[しかしどれだけ探しても
小さい牛柄は見つからない。
しかし片隅に何かを見つけて、悪い笑みが浮かぶ]
あれ、50個ほど買ってもいいですか?
[その片隅を指さして、大人買いの準備をした]
そう。
[グリタの言葉に簡単に応え]
私、お気に入りの犬がいたわ。
でもいなくなったみたい。
あまり器用そうに見えなかったから、
きっとどこかで迷子になっているのね。
[長い睫毛を震わせて、無表情に喋る]
─ 横丁の一画 ─
むー、和菓子の作り方だけ載ってる本ってのは、ありそうでないもんだな。
[ぶつぶつ言いながら、本屋で求めたばかりのA4サイズくらいの薄い本を、路上でパラパラとめくる。]
……全部自力で思い出したかったがなあ。
[断る理由もない店主の老爺は、
代金を受け取ると小さなポリ袋に
それをきっちり50個入れてレンに渡す]
ありがとうございました。
[どちらかと言えば店主が言うべき台詞を
行って、外へと出る]
[大人買いして駄菓子屋を後にするレンの背後、
老婆を載せた車椅子を押す背広姿が通りかかる。
毛糸の襟巻きに顎を埋めた老婆は
目を閉じたまま微笑んでいるよう。]
会長。
水飴でもお召し上がりになりませんか。
…お好きでしょう?
[声をかけると、老婆はこっくりと頷いた。]
あの子、探しにいってあげないと、
きっと私を見つけられないわ。
[判るような判らないようなことを言い、そして]
だから、これで最後。
[横丁を出ようと歩いていると、
難しい顔で本を見ているゾウサクを見つける]
あれ、ゾウサクさん?
歩きながら本読んでいると危ないですよ。
……。そうか、蜂蜜も皮に入れるのか。
[開いたページには、「おうちで作れるどら焼き」の大きな文字と、こんがり焼けた素朴な菓子の写真。]
しかしあれだ。昔はこんな本なんかなかったのに、どうやって作り方を知ったんだろうな、おふくろ。
お。お前さんは確か……。
[声をかけられてそちらを見ると、レンという名の青年が、手に袋を持って立っていた。]
バク転芸人さんだったか?
[おかしな間違い方をしている。]
いや、俺はバック転できませんし。
バック転してたのは呉服屋の主人ですよ。
芸人は間違いないですけど。
[さらりと修正して改めて挨拶をする]
こんにちは、今日はどうしたんですか?
仕事、って感じじゃなさそうですけど。
[ゾウサクが夢中になっている
本の表紙を見ながらそう言って]
売るかどうか考えるのが、最後。
[腕時計を、ちらと見て、目を一瞬瞑る]
二人とも、というのは難しいわ。
ねえ。あなたたち。
あなたの願いは、他の人の願いを潰しても、
必要?
ああ、自家製どら焼きに、何日か前から挑戦してるんだ。
おふくろが生きてた時分によく作ってもらっててな。
[この数日、出来上がったものは、食えない事はないが、遺憾ながら記憶とは程遠い出来栄えである。]
お前さんの方は……チロルチョコの買い占めかい?
今おまかせだよ!w ごめんね!w
対話型の私には時間合わないのは難しいなあ申し訳ない。
あと3回転くらいやりとりしたかったのだけれど
最悪、投票で決めようか。
[唐突にはじまった犬の話に首をかしげ。
最後、というのはここに来るのが、という意味で受け取りかけたときに続いた言葉に僅かに瞠目した]
――君が、思い出屋なのか……
[どちらか一人だけだと謝げる少女の言葉に、モミジへと視線を向ける。
彼女が思い出を手にいれたがっていたかどうか、あまり記憶にない。
飲んでいたときの印象のほうが強いからだ。
心を決めては来たものの、二択をせまられるとは思っていなくて、悩むように二人を見た]
自家製のどら焼きですか!
凄いなあ……。
お母さんもよく作れましたね。
うちじゃホットケーキぐらいでしたから。
[手製のどら焼きを食べたことのない
レンからは驚きと感心を交えた感想が出る。
続くゾウサクからの問いには]
買占め、って言うのは人聞きが悪いですよ。
売れ残りの在庫処分に協力したんです。
あまり子供に人気のなさそうな味ですしね。
[中のチロルチョコは全部コーヒーヌガー味だった]
[駄菓子屋の店主が、
墨で「いも飴」と書かれた容器から
木匙で掬いとったのは茶色い水飴。
受け取った老婆はそれをじいと
しばらく見つめてからねぶり始める。
秘書たる男は店主に代金を払い――
また車椅子を押して駄菓子屋を出る。
思い出を買った青年と、
思い出に辿りついた探偵を見かけたのは、そのあと]
[肯定も否定もする気にならなかった同業者の言葉。
『私の好きな人だけが笑ってれば、それで良いの。』
想い、彼らの笑顔が
其処から垣間見えたかは知れず――]
どうか、お風邪など召さぬよう。
[ポケットの裡から取り出した
【木彫りの小判】にささやかな願をかけた。]
[かつてゾウサク少年が空き家に隠したうちの一枚。
引越してきた一家が見つけ、縁起物だと喜んだ其れ。
ゾウサク少年は、存外に器用だったに違いない。
レトロ横丁の文房具屋では、
今でも肥後守を売って*いる*。]
ええ。
――はじめまして。
[冗談めかして、優雅に一礼]
YESなら聞かせて。
あなたたちは何を忘れてしまって、
どうしてそれをまた欲しがるの?
[二人の会話を静かに判別する。
居なくなった犬を探す子ども。
一瞬目を伏せて真実にたどり着いた大人。
ひとは何故、いろんな物を無くし、
いろんな物を見つけるのだろう。
そして――]
心なんてはじめから決まっているわ。
はじめまして、想い出屋さん。
[優雅に一礼する姿に微笑を返し]
[>>16 モミジの問いに首を傾げ]
勘違いなら、それで良いわ。
いらなくなったのなら、もっと良いわ。
[こんにちは。と今更に挨拶]
わたしの欲しいものはきっと――
[ちらりと、眼鏡姿の大人を一瞥し]
貴方には売れないものだわ。
[だってもう、対価は持っていないから。]
[>>19 モミジの言葉に、微笑した]
素敵ね。あなた、強いわ。
強くあろうとしているのでなく。
貴方の旅の幸運を、祈っているわ。
[対価をもっていないというモミジを見やり。
少女へと視線を戻す。
対価として用意したのは、ひとつの、古びた金貨。
他の人の願いをつぶすのは躇っても、相手が諦めたと聞けば望んでしまう]
俺が思い出したいのは――
両親のことだ。
[幼い頃に死んだ親についてはもう、覚えていることなどほとんどない。
覚えていなくとも、生きては来れたけれど――
心の隅でどうしても気にかかっていたそれが、思い出屋の話を聞いて足を運ばすにいられなかった理由でもあった]
つよい? そんなことはないわ。
私はいつも声を上げてなく、子どもよ。
でも、この横丁に来て。
貴方の噂で出逢えたひと達が居たから。
私はつよくなれたの。
想い出屋さん、貴方のおかげだわ。
ありがとう。
[「好い旅を」
交わす微笑みは、互いの幸せを願って――]
本当に、祈っているわ。
[心をこめて、もう一度繰り返して。
グリタの方へ向き直る。ほほえんで]
そう。羨ましいわ。
最後だから、サービスしておくわ。
こんなに短い間隔で、売ったこと、ないのよ。
[この日を最後に、
たばこ屋は窓口営業をやめた。
また表通りにやってきた黒塗りの車に、
背広姿は空の車椅子を積んで乗り込む。
いつしか薬屋の前、ケロヨンの足元に
見慣れない老犬が歩けぬ態でうずくまる。
その鼻先は、僅かに濡れた*さくら色*]
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