[お嬢様が新しい鞄を買ってから、一度も使われなくなったこの鞄]
ひっく…ひっく…。
僕のことも鞄のことも忘れないでぇ…っ!
[暗闇からの悲痛な叫びは誰にも届くこともないだろう**]
やまきーかわみずーめーみみくちてーだいしょー…
[引き出し二段目奥の奥。
一番底に仕舞われている学習帳が、暇を持て余して1ページ目の内容を音読している。]
出番がないなぁ。退屈だなぁ。
とっても大事にされているけど、私のページは、半分以上残っているよ。
漢字ドリルを写すも良し、途中から書き写されている「ときめきバトラー☆物語 私のしつじさま」の続きを書くも良し。
どっちでもいいから、使ってくださぁーい!あとここ狭い!
[何層にも重なるノートや下敷きの底で、元漢字学習帳はとっても*暇を持て余していた*]
あれー、おかしいなー。なんで皆いないのかなー。
[今頃気づいたのか周囲を見渡す。
どうやら現在地は屋根裏部屋のようだ]
あ。
[動いた拍子に間に挟まっていた紙が落ち
……そうになったのを器用にキャッチ]
危ない危ない。
せっかくのチャームポイントがどっか行くところだった。
とりあえずもう少し待とうかなー。
[ぱたりと倒れてそのままぐーすかと*眠りにつく*]
てか、痩せたんじゃねーか、オレ。
ぺらぺらによ。
[もう百科事典分冊でいい気がしてきた]
……。
いや、いやいやいやいや?
学習帳よオレ? 見てもらうだけの百科事典とは違うんだぜ?
学習帳のプライドを失うところだったぜあぶねえ。
……あ、おいガキ。
見ねえ顔だが、ちょうどいい。オレをお嬢さんの学習机まで運べ。
こっちだこっち! もっと下!
しゃがめ! 見ろ! こっち! 背伸びすんなー!
[戦いは*続く*]
『あらやだ落ちてる』
おとしものですから!
『昨日片付けたのに……地味。庭師のおじさんかしらね』
ちょっ! 女給ふぜいが簡単にめくれると思わないでちょうだいっ!
アタシはそんじゅそこらの安い学習帳じゃないのよっ!
……アーッ!
[*暗転*]
しくしく…。
[泣きすぎたせいか放置されている場所が良くないせいか、湿気て表紙がうねり始めた]
顔が濡れて…力が出ない…。