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[グンジに頭を撫でられると、にーっと笑った]
…おねがい、もやすと、みんな、もどって、くる?
[フナムシをくれた少年の姿を空中に探している]
戻らんよ。多分な。
[言い淀み、鈴木から気まずげに視線を外す]
狼煙でも上げてみるかね。
[テーブルの隅に置き去りにされている広報誌を見やる。
お悔やみ面。
閉じるか迷ったがそのままにしておくことにした]
[視線は空中を彷徨わせたまま]
おさかな、おっきい…おぉきぃ…ぉおきぃ…
[またかくかくと震えている。細い瞳には恐怖の色が濃く現れて。]
…さむぃ…つめたぃ…あおぃの…
中には絵馬に書いてお祭りで燃やす、って子もいたけどさ
あたしはずうっと残しておきたかったからね。
[むしろ、書いた、というより彫ったに近い願いの言葉は
―『絶対、一人前になって帰ってくる!』―
その言葉通り帰ってこれたのはきっと言葉を残したからだと]
魚は今はないなぁ。
[などと猫少年に語りかけたがその視線の先を一緒に見た]
あらやだ、何もないじゃない?
何か見えてるの?
[首を傾げる]
佐々木君?
大丈夫?
やっぱり貴方、具合が悪いんじゃ……。
お布団で寝る?
[震える少年に、とりあえずと自分の着ていたカーディガンをかける。]
[いつの間に炊事場を出ていたのか、
入り口のほうから再び現れる]
なんだ、にぎやかになってんな。
[豚汁を取った手のひらには緑色の軟膏が
塗られているのが見えるかもしれない]
うぅん…みぇない…ちがぅ…だめ
たすけて…じぃちゃ…
[浴衣の上にかけられたカーディガンに、震えは少し収まったか。]
らぃど!
[入ってきたライデンをすがるような目で見た。]
ときどき見えるよ。
[ホズミの問いが自分へのものかはわからず、小さく言った]
ライデン君おかえり。
[少年がライデンの名を強く呼ぶ様子にやや目を丸くした]
おっきい?
さむくて、冷たい…
[猫少年の言葉を反芻する。
それはさっき自分が勢いで振り払った嫌な感覚によく似ていた。
ふと何もいえなくなって口をつぐむ]
……ふっ
[口をつぐんだのも束の間、現れたライデンの掌を見たならば
不意に笑いがこみ上げた]
やっぱ、薬屋、なんだねぇ。
[おびえたように震える少年の様子に]
…薬がいるだろうかね。
[風邪の薬か、気の薬か。]
糖衣のなんか、もってきてたっけねえ。
[半分冗談で言うが、心配そうに]
ライドウさん……。
佐々木君の様子がおかしいんです。
震えて……。
[薬屋にほっとした顔で少年を指し示す。
その少年が何事か呟くのを聞き取ろうと、口元に耳を寄せた。]
おじいちゃん……?
[少年に呼ばれると、とった豚汁をテーブルに置いて]
そんな目で見んじゃねえ。
[少年の頭を撫ぜる]
あと、あたしゃライデンだ。ラ・イ・デ・ン。
[一瞬、エビコの方を見、
すぐにセイジの方に視線を戻す]
[グンジが見える、といったのを聞くと]
…ふうん、先生も何か見えるの?
あたしには……見えないや。
[事実とは違うことをとっさに口にする。
それを認めてしまうと、いけない気がしていたから]
[ライデンに頭を撫でられると、一度鼻を動かし、軟膏の塗られた手を見やった後、顔を見上げる。まだ小刻みに震えているが、]
らぃど、けが?
[訂正された名前はスルー。か細い声を出して心配そうに見上げた。]
糖衣がなけりゃオブラートに包め。
[軽口になり切っていない調子で言う。
ホズミに対しては]
見えないのが通常だな。
[じわり、頭の中が熱を帯びるような感覚に首を小さく振る]
[くしゃくしゃと軟膏を塗ったのと
逆の手で少年の頭を撫ぜながら]
火傷はまず冷やしてから手当てすんだよ。
[ホズミに言われるとそう返した]
[そ、見えないのが、フツウなんだ。
[グンジの言葉を反芻した。
まるで自分に言い聞かせるように]
先生は何が見えたの?
[でも、自分が見えたものは皆にも見えているのかとも思って
つい口にしてしまう]
へぇ。
冷やしただけじゃぁだめなんだね。
あたしはいつも氷当ててそれっきりだったよ
[ライデンの方を少し感心したように見る]
[エビコの問い>>39に、じっと彼女の顔を見返している。あちらとこちらが曖昧なこの空間が、やがて引き裂かれる予感がした。その時、自分はどちらに居る事を望むのだろう。あるいは、既に、戻るか行くか、決まっているのか]
私は……。
[口を開こうとした瞬間、ホズミの明るい声が聞こえて]
[震える少年にたずねられれば]
ちょっと馬鹿やっちまってね。
[「まあ馬鹿といってもあの馬鹿にはかなわんが…」
などと既に消えたゼンジの事を言いそうになり、
一瞬口を閉じる]
まあアタシはどってこたあねえ。すぐ治る。
あと、らーいーでーん。
[再度名前を訂正する。無駄そう、とか思いながら]
…らーい、ふじみ?
[撫でられながらも、どこかしら不安そう。かたかたと震えは大きくなり、]
やぁ…じぃちゃ、じぃちゃ…
[きょろきょろと誰かの姿を探すが、見つからない。]
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