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不安なの?どうして?
……。
だからそのままの姿でいるの?
[獣となっても変わらぬ仕草>>+40に、もう一歩足を踏み出す]
[単に飛び掛かるのでは、跳ね退けられる可能性は十二分にある。
咄嗟に投げた椅子が狼にぶつかり怯んだ隙を狙って、ナイフを突き出す。
それと同時に、>>32 ヴァルテリの口が開かれて、その牙が目に入った。
人の喉笛を一撃で噛み切るそれを目にしても留まらずにいられたのは、飛び出した勢いのお陰だ。
その牙が自らの鼻先に届くより、一歩早く。
―― 手の中の銀色が、獣の喉を貫いた。
眼前で、狼の姿が見慣れた老人のものへと変じていく。
その光景に追撃も忘れ、ナイフを握ったまま、ニルスはヴァルテリの顔を見る。
喉に刺さったままのナイフが、更にヴァルテリの喉を傷つける感触が、手から伝わる。]
……すまないが、これで終わりのようだ。
────!
[ハッと女の意識が逸れた。
ニルスとクレストが、灰色の狼へと飛び掛る。
狼は人の姿へ──ヴァルテリの姿へと変じゆく。
その光景に目を奪われた。
はたりと獣の尾が足元を叩く感触に気付いたときは、既に遅く]
…イェンニ……っ!
[桔梗色の獣は、姿を消していた]
[クレストが引っ張っていた毛は、灰色だけをその手にのこし。
ニルスの言葉に、床に倒れた老人の顔に苦笑が浮かぶ]
――、
[言葉を紡ごうとするも、溢れ出る血で喉がふさがり。
そのまま、ゆるりと瞳を閉じて、息絶えた**]
[枯れ木のような老人が、喉から命を散らしゆく。
新たな鮮血が溢れ出し、床を赤く染めていく。
その光景を、女は沈んだ表情で見た。
悼むように歩み寄る先は、ユノラフの元]
生きる……ために…、
[女の霊は、ふわりと死体の傍へ屈みこむ。
倒れ伏した男の遺骸に触れられぬ手を、
撫でるようにゆっくり翳した。
物思うように、息絶えた男を見つめる]
[ナイフから手を離せば、ヴァルテリの身体は床へと倒れていく。
その表情に浮かぶ苦笑を見、何かを言おうとするかのように唇が動くのを見遣るも、それが音になることはない。]
………。
[ニルスは言葉もなく血で汚れた片手にナイフを握ったまま、同じく血で汚れた指先で眼鏡のブリッジを押し上げる。
その血は、―― 人と同じ赤い色をしていた。]
…。ねえ、マティアス。
私は思うのよ。
私は、人狼というのは人と魂の異なるものだと思っていたわ。
だからそれを始末するのは、当然だと思っていた。
けれど、イェンニとヴァルテリと……
ふたりが、もし人の心を残し続けていたのなら。
そのまま目覚めて、止まれなかったのだとしたら。
…苦しかったのは誰なのかしら。
[女が目を向けているのは、ユノラフへ向け。
けれど声は、マティアスへと向かう]
[狼の喉にナイフが突き立てられ――手の中の毛皮が、縮んでいく]
……っ。
[狼の姿は、みるみるうちに見慣れた老人のものへと変わり]
[何かを告げようとその口を動かすも――こぼれるのは言葉ではなく、ごぼごぼとあふれる血の泡で]
[己の手に、僅かばかりの毛を残し、老いた狼は息絶えた]
恨んでいいことよ。
怒ってもいいことだわ。
ドロテアもマティアスもユノラフも…いいえ。
アイノもレイヨも、きっと。
けれど私は、それだけで終わらせたくないの。
これまで過ごした時を賭けても、確かめたいの。
…死んで尚、目覚めたものは変わらないもの?
抗えない血の衝動は…本能は身体を制するもの。
では身体をなくしてもなお、血は心を凌駕するもの?
私、確かめてみたい。
[女は顔を上げる。
目は、死んだ老人へと向けられた。
不安を受け止めてくれた老人。
折に触れては珍しい話を語って聞かせてくれた人。
彼に刃を向けたのは、人狼と思ってのことではない。
ただの癇癪、錯乱、八つ当たりにも近い。
老人が最後の息を吐く。
それへ、女はそっと瞼を伏せた]
[長いような、短いような。悪夢のような時間は、終わった]
[自分と同じように、友を失ったニルスだけれど、掛けられる言葉は……みつからない]
[視線が、使用人部屋の方に向き、彼は音もなく呟いた]
――終わりましたよ。
[……と]
残り少ない時間の過ごし方を、見つけたんだな、ウルスラ
[おそらくドロテアが姿を見せないのも、そういうことなのではないか、と男は思った]
そうだな、もしも、だ。
おれ、が人狼で――、って考えたら
死んでしまいたい、くらいに、つらいな。貧しくて小さな村だけれど、おれ、は生まれ育った、ここが、ここに暮らす魚食ってくれるやつ、みんな、好きだから。
でも、おれは……勇気がないから
きっと、そんな道は選べず、に
人を殺める、と、思う……
[こんな仮定は、本当に人狼である老人や彼女にとっては、失笑ものだとは思いつつ]
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