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―― ゼロ・シティ ――
ここに、男が一人。
もぎゅもぎゅと好物の大福を食べている。
「……ふうん?」
――だけでなく。
「なんだか警察の動き、早いですねえ?」
受信機のダイヤルを指の腹で叩きながら呟いた。
ヘッドセットに届く声は常と変わらないようであっても、場数を踏んだ男の耳には不穏に届いたようだ。
「……ま」
思案するように視線を天井に向けたあと、大福がひとつ、口元に運ばれる。
「警察に尻尾を掴まれるような真似、私らは――私は、しませんけどね」
もぎゅもぎゅと動いた口が、不敵と弧を描いた。
***
お集まりの皆様、ようこそ。
この村は、名のある大悪党が集う村。隠しても無駄ですよ。私にはわかります。あなたも名のある大悪党だということは。
さて、ゼロ・シティ――始まりの街に踏み込む前に、して頂きたいことがひとつあります。あなたは大悪党ですが、wikiには目を通してください。悪党にもルールはあります、大がつくならなおのこと。
え、そんなこと大の悪党が人前で出来ない?
仕方ない。では、ほら、私、後ろ向いてますから今の内に見てきてください。場所は情報欄に書いてあります。
……見てきました? はい、ありがとうございます。
ご質問がございましたらメモをご用意致しましたのでお使いください。確認し次第お返事いたします。
なお、メモは質問にのみ使用して頂ければ幸いです。
説明は、以上でございます。
それではご案内致しましょう。
皆様大悪党が活躍するにふさわしい舞台へと――
さて、まずはお茶の時間にしましょうか?
[とある場所。
仕事師が集まるその店の内装は、
ダークブラウンの壁に黒光りの大理石の床。
黒いボウラーハットの紳士は、ティーカップでコーヒーを注文し、その黒い湖面に自身の顔を映し出している。**]
で、君たちに集まってもらったのは、
ほら、君らにはいわくつきのあいつの話さ。
でっかいあの街を転がしている、あいつに、
借りがある奴は多いと思ってね。
どうだい?
[店の扉に背を向けたまま、
呼び鈴が鳴ってもすぐに振り向きはしないだろう。]
─とある場所─
[からんころんと扉を開けて、入ってくるのは眠る三毛猫を抱きかかえた小柄な男]
……はて。ここはどこかのう?
[入口でわざとらしくぼけたあと、ためらいもせずに中に入り、足音もなくネギヤの背後に回る]
わしは外に出んと言ったろうに。
老人を働かせるのもたいがいにせい。
──しかし。
そのかいのある、楽しそうな仕事じゃのう。
さて。
……おまえさんは、誰だったかのう?
[ヂグに問いかけた。
本当に知らないか否かはさて。
ご飯を食べたか食べないかを家族に聞きかねないこの老人は1世紀前から名を馳せている情報戦の猛者である。
ありとあらゆる情報を調べるだけではなく、情報のねつ造もお手の物だ。
ちなみに1世紀前から自称80歳と称している]
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