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[ただ、ただ、
忘れたくないと、忘れないようにと、だいじにだいじにしまっておいた、かみさまとの思い出を
こんなにかんたんに忘れてしまうなんて
そんなじぶんが情けなくて、悔しくて。
わたしは、ぽろぽろぽろぽろ、泣きました**]
お星様もきっと、ルリちゃんを大好きだよ
うん、またね
[戻っていく少女の後ろ姿を見送る。
老女はどうしたろうか。
若者は今暫くここにいよう。
何故なら、珈琲をまだ飲んでいないから。]
[不思議な雰囲気を纏うお嬢さんの
唯一の否定の言葉に面食らったのは一瞬のこと。
"色々と複雑な年頃なんだろうなァ"と
ぼんやりと馳せた。
若いお嬢さんが居なくなった後の屋上は
なんだか少し、寂しさが増したような気がした。
お嬢さんがそうしていたように、
少しばかり顎先を持ち上げ、白い空を見上げる。
良い頃だって、あったのだ。]
[末娘が小学校に上がる頃、仕事が軌道に乗り
若い衆を5人ほど雇って切り盛りしていた。
女房も夜の仕事を辞めさせ、共に仕事を分担し。
娘達には可愛い服を買い与え、
好きな習い事をさせていた。
夏休みには海辺の宿へ旅に出る。
出来たばかりの鼠ランド、美術館へ絵画を観に訪れ
冬には、露天風呂が自慢の温泉宿へ
家族全員を連れて出掛けた。
誕生日には、外食を。
笑顔の絶えぬ家の中で、
娘たちのラフスケッチが溢れていく。]
『お父さん、みて、100点とったんだよ!』
『お父さん、またゆうえんちいきたいな』
『お父さん、せぇらーむーん描いて』
『お父さん』
『お父さん』
[けれど、景気の良い時代はそう長くは続かずに。
仕事は次第に安く叩かれる下請けのみになり、
知人の伝で辛うじて塗り替えの仕事が出来る程度に。
何時しか、朝とも夜ともつかず
酒に溺れるようになっていた。
博打に手を染め、勝てば豪勢な飯にありつき
負ければ家族に手を上げ、娘のバイト代まで奪い
翌日の博打代にして、時を過ごした。]
ああ… 寒ぃな…
[愚かな過去の自分を思い出し、
それを払拭するよう首を振った。
空腹と寒気は人を気弱にしていくのだ。
綺麗な、無垢なお嬢さんの姿を
娘達の姿と重ねながら
屋上へ背を向け、院内へと戻っていった*]
[あぐらをかき、便箋を睨み付けている。
手帳に挿していた万年筆は、ペン先が少し乾いていて、最初に書いた宛名が掠れてしまった]
……本気、かな
[閉じられたカーテンの中、呟く。
「手紙を書いて」
そう言った彼女は、どんな表情をしていたっけ]
やめたやめた
[首を振ったタイミングで、点滴を交換しに看護師が現れる。咄嗟にだしっぱなしだった手帳で便箋を隠した。
予定の書かれていない手帳を、とん、と手のひらで叩いた]
[相変わらず職は、ない。
知人に頼み込んで日雇いで塗装工をしているが
ここ最近は呼んで貰えない日々が続いていた。
帰って酒でも飲もうと、廊下を歩む道すがら
白衣の青年の姿が見えた。医師だろう。]
医者、っつーのはよう…
[そこに佇んでいるだけで、
妙な威厳があるから不思議だ。
どんなに若かろうが
白衣を着て院内を歩んでいるだけで
「先生様」と拝みたくなってしまう。
母が末期だから、余計にそう感じるのかもしれない。
遠巻きにユウキ医師を眺め、手を合わせた]
母ちゃんを、頼みます先生…
[声音は届かずとも、妙な動作は
医師の目に入ってしまうか。
せめて、苦しまぬように、と。
解らずも、男はそのまま正面玄関から*去っていった*]
[珈琲を啜る。
珈琲の何が美味しいのか、と聞かれた事がある。
苦いだけじゃないか、そう言われる。
一体何が美味しいのか。
答えよう、わからない。
煙草や酒のように習慣性がある。
それだけの物のような気もする。]
珈琲は、お好きですか?
[老女がまだそこに居たなら、そのような事を聞いてみたかもしれない。]
[そうしていた頃、ふと妙な仕草をしている男性が目にとまった。
こちらに手を合わせて、何やら祈っている風である。
何かを呟いているようだが、声までは拾う事は出来なかった。]
…―――?
[少しだけ、考えた。
けれど、大体の察しはつく。
男性は私服のようであるから、お見舞いの方なのだろう。
そして、神でも仏でもなく、白衣を着ただけの若造に祈る事など一つしかない。
入院されている方の事であろう。]
[こんな時、任せて下さいだとか、必ず治して見せますだとか。
そんな言葉が口から出るのなら、どんなに良い事だろうか。
そしてそれがいつも実行出来るのなら、どれだけ英雄的で、どれだけ気持ちのいい事だろうか。
去っていく男性に、小さく頭を下げた。
他のどの場所より、死の溢れる場所が病院だ。
戦場を除けば、世界で一番人の死ぬ場所だ。
初めの頃は、救えなかった命を想い涙もでた。
遺族の涙に、心を痛めた。
だが、暫くするとそれもなくなった。]
…―――
[命を救おうと、医者になったはずなのに。
志は刻まれる時計の音に混じって、感情は時の渦に埋もれた。
いずれ必ず追いつかれる、鬼ごっこ。
逃げる者をいくら助けた気でいても、再び訪れたその人はもう捕まっている。]
[自分の存在意義を、忘れまい。
そう思い続けてきたけれど、それはきっと不可能な事で。
神の決めた定めから、逃れる術などありはしないのだ。
等しく、平等に、訪れる未来。
ならばせめて、出来るだけ苦しくないように。
出来るだけ、安らかに。
最後に作る顔が、泣き顔でないように。
それが自分の仕事なのだと、若者は思うようになっていた。]
ふぅ
[だから、拝まれるような者ではないのです。
心の中でそう思ったけれど、口には出せなかった。
院内には、患者がいるのだから。
医者の弱音は、絶対に表には出せないのだ。]
[幸せな人生ばかりでは、きっと無いのだから。
苦しい事、悲しい事、いっぱいあるだろうから。
さっきの少女、ルリと言ったか。
あの子のように少しでも、笑ってくれる人がいたのなら。
医者の存在意義は、あるという物だ。]
お店のキャベツが腐ってる
きゃー、別のにしてー
[・・・そうじゃない。
そういうんじゃない。
*苦笑いが浮かんだ*]
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