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朝
[切るような寒さの中、出勤してきた野木はコートから着替える最中、同僚の噂話を聞いた。
患者のことだったり、医師や看護師のことだったり。
聞くともなく耳にはいるそれは[人形師 ボタン]と――]
[穏やかに眠る者。痛みに、不安に魘される者。
彼らの夢の中に、誰かの影が映りこむ。
会いたい誰か、毎日会う誰か。
忘れようと想っていた誰か。
もう、会えぬ誰か]
[気づく者もいるだろう。自分の想いに。
家族へ、恋人へ、通り過ぎた誰かへの、想い。
気づかなくてもいい。その想いがあれば――きっと明日は、穏やかに眠りにつくことができるから]
[目覚めた昼は、もしかしたら嬉しいことがあるかもしれない。
交わしたことすら忘れていたいつかの約束が果たされたり、口約束程度だと考えていたことを、守らなくちゃ、と少し焦るかもしれない。
それがもう、叶うことのない願いのようなものであっても。きっと、何かの形で、いつかはきっと、守られる。
そんな優しく、厳しい世界の朝が、また*始まる*]
[それは立て続けに起こった不幸な出来事だった。
長期入院患者だった後藤の容態が悪化し、院内に慌しさが駆け抜けた。
その後、早朝から始まった黒枝の手術も――失敗に終わる。
己はそれらとは異なる急患の処置に追われ、一足先に仮眠室で睡眠薬に頼る眠りへ誘われていたところだった。
数年振りに、夢を見た。
それはとても、幸福な夢、だった―――…**]
ラウンジ
[話し相手の消えたラウンジで、彼女はそっと、周囲の話声に耳を傾けた。同じようなことが、違った声色で、宙を漂っていた。
彼女は不意に息苦しさを覚え、喉をさする。さまざまな言葉が蔓延するその場で酸素を失ったようにしながら彼女は人形を抱きすくめた。]
[その日、彼女は昔の夢を見た。]
[彼女の夫も、娘も、それから孫たちもいる夢だった。
彼女らは楽しげに海辺を歩いていた。
孫の手に合ったのは だった。
彼らはそれを美味しそうに食べていた。
それだけだった。
足元に寄せる波はきらきらと反射し、夢の情景に輝きを添えていた。]
朝 病室
[彼女は一人で起きて、寝台の上に座っていた。
先日の我儘など思い起こさせないような素振りで、礼儀正しく看護士に対し食事もきちんと、とった。]
……今日はァ、いい天気かねェ
[窓の向こうを見ながら、彼女はぽつりとつぶやいた]
[老人は年寄り特有の動作で重そうに体を起こした。
人形と、裁縫道具と、それから先日買い求めた菓子の詰まった袋を持ち、彼女は病室を後にする。]
午前 ラウンジ
[彼女はやはりそこにいた。
いつもの定位置で、膝の上には人形のスカートを広げて、自身の脇にはセルロイドの金髪人形を座らせて、そうして彼女はそこにいた。時折視線を持ち上げて、その場に入ってくる人間へと向ける。そして、しわくちゃの顔になんとも形容しがたい表情を浮かべてから視線を戻すのだ。
それ以外、彼女は自身の制作に手を付けるでもなく、窓の向こう、遠くに見える海原の欠片にじっと視線を向けていた**]
ゆめ
[○月×日、晴れ。
今日は、わたしと、おとうさんと、おかあさんと、おとうとのハルちゃんで、海に行きました。
海へ向かう列車の中、わたしとハルちゃんは一緒に歌をうたって、よく晴れた空には虹がかかっていて、窓の外には満開の桜並木が見えて、おとうさんもおかあさんも、楽しそうに「 」いました。
ああ、こんな日が、いつかまたやってきますように。]
朝・314号室
……寒いなあ…。
[このところ毎日のように繰り返しているその言葉を、今朝もまた、呟いた。
暖房がかかっていても、どこかひんやりした空気が感じられる。
最近はずいぶん調子が良いから、千夏乃は病室でじっとはしていない。昨日も、つい中庭に長居してしまって、帰るころにはせすじがぞくぞくして、くしゃみが出た。
いま体調を悪くしてしまったら、お正月の外泊が出来なくなってしまう。それはとんでもないことだ、と考えて、今日は部屋の中か、せいぜい三階で過ごすことにした。]
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