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――朝、宿の一室――
……むかつきますね。
[目覚めはあまりよくはなかった。昨日のことを思い出して独り言つ。
なにを言ってもウルスラにはさらりとかわされて。そのまま別れてしまえば苛立ちだけが残った。]
僕も気が立ってるんでしょうけど。早く開通すればいいのに。
[いつもの燕尾服に着替え、外にでる。]
戻ってない……?
[食堂に行けば、戻らぬドロテアが騒ぎになり始めていることを知った。何か知らないかと言われれば、首を振る。]
僕が知るはずないでしょう。彼女には嫌われてるんですから。
[僕も彼女が嫌いですよ、なんてことは言わなかった。]
―― 森からドロテアの家へ ――
[――数人が運ぶ戸板に、横たわる亡骸。
森で見つかったドロテアは、村人らの手によって
無残な死の知らせと共に生家へと運ばれていた。
手伝いに呼ばれたペッカは、皮膚だけで体に繋がる
ドロテアの足が千切れぬよう、支えながら歩いた。]
… ……
[誰も口を開かぬ道行きは酷く重苦しく気味が悪い。
紅いしたたりは赤黒いねばつきへとかわりゆき――
恐ろしく長い時が、それでも移り行くのを示した。]
[ペッカは、呆然と光景を瞳に映す。
喰い散らかされた骸へ白布がかけられるのを見た。
その白へ、零れた命の色がじわじわと広がるのも。
『 人狼は 居たんだ。 』
深く暗い穴の底から昇るような怨嗟の声を聴いた。
死者の父親が蒼白な面持ちに怒りを混ぜるさまも。
――血腥い匂いを引いて、列は村へと向かう。]
[少女を探していたウルスラとは通りで行き会った。
ペッカは、目が合った彼女へぎこちなく首を振る。
遠巻きに、或いは駆け寄って。嘆きの列はゆく。
…村衆の列。誰からともなく、呟きは漏れ出す。
『 …狩り出せ。 』
『 追い立てろ。 』
『 人狼に、復讐を。 』
村を覆い渦巻き出す何かを感じて、ペッカは吐気と
悪態とを同時に堪えるような面持ちで列に従った。]
[亡骸のちいさな手が握り締めているのは、
僅かに毟り取ったらしきおおかみに似た獣毛。
…やがて、ドロテアの部屋から日記が見つかる。
記された直近の日記に、僅かでも名の挙がった者は
人狼の血を疑われ集められることと*なるだろう*]
―― 町の通り ――
[どうしようかと迷って居るうちにざわめきが大きくなる。
嘆きの悲鳴が聞こえ――、外へと出てみたものは、森からやってきた葬列だった。]
……まじかよ……
[ドロテアが、人狼が。
復讐を。
口々にいう人々の声が聞こえる中。
ゆっくりと近づいていけばペッカの姿が見える。]
――……
[その姿に声を掛けることはできず、ただ僅かに瞳を伏せて。
その視線の先、亡骸が握った金色の獣毛がいやに目に付いた。]
[一階で、いつも通りの朝食を取っていれば、次第に大きくなるざわめき。]
『ドロテアが』『人狼が』『復讐を』
人狼……? まさか本当に?
[馬鹿にするような口調は、昨日ほどの勢いがない。ミルクを飲み干し、確認のために外へ向かった。]
[ドロテアの葬列は生家へと向かい。
そしてドロテアの日記を見つけた人が、疑わしきものの名を声高に呼ばわる。
その中にはベルンハードの名も含まれて。]
えー……
[疑われて心外だというように眉をひそめ。
ウルスラやペッカ、ラウリにアイノの名前まで呼ばれればさらになんで疑われるんだと、憤慨する。]
疑わしきは罰せよじゃねーだろお……
─町の通り─
[ざわめきが耳に届いたのは、しばらく歩き回ってからのこと。
切れ切れに聞こえる声に、嫌な予感を覚えてそちらへと向かい]
……な……。
[鈍い色を滲ませる、しろ。
それが何を意味するのか、つかめず。
彷徨わせた視線は、列に加わるペッカを捉えるものの。
彼から返されたのは、ぎこちなく首を振る仕種]
……なんで……よ?
[口をついたのは、そんな、呆然とした、呟き]
[知らず、呆然と立ち尽くすものの。
日記に記された名を元に疑惑をかけられたならひとつ、ふたつと瞬いて]
……ちょ、ちょっとちょっと。
幾らなんでもソレ、短絡じゃないの?
[上がるのは、先とはまた異なる理由で呆然とした、声]
う、ぁ……。
[赤黒く滲んだ白い布、それが示す事実に口元を抑える。
布の端からちらりと見えたのは、人間の力では絶対に無理であろう、噛みちぎられた切断面。街では見る機会なぞ無かったもの。]
……ただの狼じゃないんですか? その狼が人に化けているって言う証拠は?
[名前が読み上げられれば反論するけれど。力で叶うはずもない相手を前に、その声は生意気な色を潜めている。]
[短絡、との言葉に返されたのは、ならば何故昨日、少女を探していたのか、という問いかけ]
はぁ?
なんだか思いつめてるみたいだったから、話して落ち着かせようと思ってただけよ。
怒らせた理由の一端は、アタシでもあるからさ。
[平静を保とう、と念じながら、問いに答える。
けれど、声の端々に苛立ちが滲むのは、隠せない]
[しかし日記を手にしたドロテアの父は、暗く澱んだ瞳のまま。
『違うというのなら、人狼を、娘を殺した者を差し出せ』
ただ、呪詛のごとく、呟くのみだった。]
……うわあ、一番やな展開……
[ぼそりと呟きながら、呆然とするウルスラや、証拠がどうこう言うラウリを見る。]
この町の森の狼はふつう町の近くに出てこないし、人も襲わないんだよね……
ほかに食べる動物がいるから――
[狙われるのも、人間じゃなくて町で飼ってる家畜だったりするのだから、人間が狼に襲われることなど、ほとんどないと、告げる。]
―― 森の空家 ――
ひっ!
[足元を走る鼠に声を上げる。
窓の外には人の気配。
覗き込むと、運ばれるドロテアが木々の合間に見て取れた。]
婆様、どうしよう。
[羊皮紙が入った封筒を胸元に隠し、蹲った。]
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